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The Dawn of Magic's Ice Age

「アイス・エイジの黎明」

Source: http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/223
Written by Skaff Elias


 今回は、8月2日からのIce Age Weekに合わせて発表されたスカッフ・エライアス(Skaff Elias)氏の記事"The Dawn of Magic's Ice Age"をお届け致します。例によって訳責は私、榊 井壹にありますので、良識派の皆様はソース一度目を通して頂くことをおすすめします。それでは、拙い訳文ではありますが、ごゆるりとお楽しみ下さい。


 今回のお話はMagic第1のエキスパンションであるIce Ageの物語です。おっと、いくらデビューが一番最初だからってArabian NightsMagic最初のエキスパンションだという風にはどうぞ言われないで。Arabian Nightsの着想すらできてもいない時に、このIce Ageは生きていたんですからね。

創始

 1991年のペンシルヴァニア大学のMagic初期テストに関わったプレイテスト・チームは、ゲームをよりよくするというそのために、頑迷な立場を取ってきました。数学や物理学を取った卒業生ですから、薫陶も受けてますし、また自分の性格もあいまって、議論というものにはやけに親しみがあり、言わずもがなそれに勝てるような面々ですから、妥協ということはなかなかできず、しようとも思わないものでした。当初、Ice Ageはエキスパンションというよりも、寧ろそれ自体である程度ゲームとして成立しているべきだとデザイナー達は考えていました。

 誰しもプレイテストの手を止からは誰も逃れられないことは、エキスパンションのアイデアがまだ具現化されていなかった時も同じですが、エキスパンションというものの詳細な展望については宙ぶらりんでした。個人であろうが、大小関係なくグループであろうが、エキスパンションを作る際、その宙ぶらりんの物が創作物の基礎中の基礎だったとは。Ice Ageというのは、私達3人、デイヴ・ペティ(Dave Pettey), ジム・リン(Jim Lin), そして私スカッフが、「自分達なら基本セットよりももっと面白いカード・セットを作れる」、と思ったことを切っ掛けに動き出しました。(あれはWotC中枢部の要請だったか)リチャード・ガーフィールドはすぐに、エキスパンション作りに関する人材を公募し、クリス・ペイジ(Chris Page)をうちのチームに割り当てました。人がチームに「割り当てられた」などというと聞こえが良くなかったのが心境でしたが、しかしそれ以上に、クリスはプレイテスターの中でも一、二を争ういい奴でした。他の面子とは全く異なった思考法を持っていたために私達のグループで最も欠かせない人物だと、色んな点で思い知りました。あ、ここで「私達」ってのは広義で使ってるものとして取って下さい。たとえば「哺乳類」とか「脊椎動物」とか。で、ジムとデイヴと私のうち誰かがカード案を一個考えたとして、他の二人に「思いつかなかったろ」とは言いにくいわけですよ。そういえば、クリスの案については、誰からも聞いたことがなかったですね。

 さて私達はよい基本セット作りにとりかかりましたが、このアイデアをすかさず色んな出来事が授けてくれることには気付きませんでした。例えば「飛行」がクリーチャーに単に一語余計にくっついているんじゃあなくて何か特別に待遇されるセットにしようとか、クリーチャーに色が少ない所に意味があるセットがいいだとか、友好色より対抗色がプレイされにくいようにしようとか、ライフと引替にカードをくれる派手なエンチャントも有りだけどクリーチャーの戦闘にも戦略性をもたせようよとか、このゲームが長きに渡って続き(我々がデザインを始めた時には、際限なくカードが制限されますから環境が速くて速くて)、沢山転換があってほしい……そんなもろもろの要望がありました。

 Ice Ageは、こういった要望を、2つの方法でやりとげました。新しいカード群と、基本セットから組み替えをしたカード群です。先述の通り、Ice Ageの意図は、実用的な目的で環境を変えることでカードも変えるという「スタンド・アローン」の形式をとらせることです。《Disenchant/解呪(VARY)》はよいカードか? 《Terror/恐怖(UN-6E/MD)》は? 《Juggernaut/巨大戦車(UN-RV/DS))》、それとか《Counterspell/対抗呪文(VARY)》はどうだろう? 環境を知らずしてこのような問題には答えようがありません。私達としては、テキストを変えないでカードの名前だけ変えられたらいいなと思っていました。

 しかし、計画が狂ったときは、頭から盥が落ちてくるのを避けられない感じでした。Magicはどうも急成長をしすぎて、初期計画それだけで意味を成してしまうほどに、沢山のプレイが行われてしまう物なのです。つまり、新しいセットをプレイヤーが待ちきれないので、すぐに新しいカードが欲しくなります。新しいカードが現状にひと騒動起こすことを願うのと同じく、プレイヤーはすぐに一部の人々に《Disenchant/解呪》やゴブリンや土地を買い直させようと新しいものを求めるのです。しかも組み合わせにちょっとやそっとバリエーションを持たせるぐらいでは、《Hypnotic Specters/惑乱の死霊(UN-4E)》を手放し《Wall of Wood/木の壁(UN-4E)》を4枚挿す羽目になった人にはあまり効果が有りません。ですからリチャードはところてん方式にエキスパンションを、つまりもっとカードを作れとせがまれるわけです。彼は監督なのですから、フィラデルフィアの仕事場に常駐した小人さんにお頼みして、Ice Age予定のカードからAlphaの方によこしてやり、そして私達や他の働いているみんなに、今日「正式版」として現存するエキスパンションをお披露目したのです。Ice Ageに入るはずのカードの束がAlphaの方へと押し込まれてしまいましたが、セットの残りとその中心的な戦略のテーマは、1年以上遅れてしまったものの、大多数の観衆や新しもの好きのゲーマー達でごった返しになりました。Ice Ageがリリースされる希望を失った人さえも覚えているうちにはいなかったけれど、もし私が今知っていることをその時にもう知っていたら、私は負ける側に賭けたかもしれなかった、ということを言いたいのです。WotC内部でのIce Ageのフィードバックは、全部が昔のカードの焼き増しでしたから否定的で、セットの内容ばかりでなく、コンセプトの点からも遅延を受けたのです。こうしたプロジェクトというのはどんな企業でも乏しい実績しか生み出しません。Ice Ageやスタンド・アローン・セットを総合的に振り返ると、生き残ったのが本当に幸いでした。

修復

 適宜、ニーズに応じた人に信頼を置くことによって、正しいのに人々からは信じられてこなかった決定に辿り着けるということは、ピーター・アドキソンの経営哲学とその小型版のリチャード・ガーフィールドが編み出したWotCの体制の証左といえます。Ice Ageは1年も船出が遅れ、5つものエキスパンションに後れを取ったほどです! 開発陣の外側の人々は、(賢明にも)どのように再録カードが受け入れられるかを懸念していました。セット全体のデザインをやり直し、その後またやり直しをしなければなりませんでした。私らは絶えず新しいカードを加え続け、それに加えて「よりIce Ageっぽく」するために表層構造を書き加えて欲しいという要請を受けていました。折に触れ、「Ice Ageという言葉から感じるような雰囲気が足らない」と言われてきました。ぴりっとする「氷河期」の感触をどう生み出すかが未だに分からないでいた時、雪かぶり土地(Snow-Covered Lands)が合うんじゃないかなと思いました。現にこれを加えたことで、批判家を満足させたのですから。

 あらゆる不満の主張を通して、開発陣は、スタンド・アローン・セットは単にゲームの余命延長のためではなく、プレイヤーのある層を虜にする機会を与える必要がある、という主張を続けてきました。そして経営陣が聞き入れてくれた結果、Ice Ageがスケジュール表に載ったのです! もうこれで白紙撤回は有りません。今日はスタンド・アローンのエキスパンションと、Magicの要石としての効率的で定期的な環境の徹底調査についてお話ししましょう。Ice Ageの残した遺産の話なんてしたら、《Orcish Artillery/オーク弩弓隊(UN-8E)》がどこから来たか、位のおもしろ話ぐらいでしょうからね。

 Ice Ageのリリースが遅れたことで、多岐に渡る変化が訪れました。そのうちの幾つかはセットを悪くするものです。最終段階では見境無しに「フィーリング」で複雑なカードを入れられてしまいました。また、友好色の重複が明らかになってしまうぐらいにテキストを加えられてしまいました。私達が望む数の再録カードが許されなかったので、セットは悪くなったのだと信じています。その比率について交渉をしたのを思い出せますが、4人は一度振り返って、テーマに合うように10枚のカードにテキストを加えて、でさらに振り返ってまた5枚やってみる、等々やってみました。ちょっと手の掛かる仕事ではありますが、デザイナーが大概しないはずのない、新カードを作る機会を与えられるわけですから、楽しみでもありました。

 さて、この遅延は悪いことばかりではありませんで、元のバージョンよりセットをもっと、きちっとしてくれたわけです。単純な話、カードを作ることに傾注する時間がもっとできたわけですから。2年前に始めた時よりも、もっと多くのことが分かってきたのです。私達はひたすら、デザイナーの立場からすれば興味深いカードを作るのに向けることができます。ただ、どのカードが、現実で試されること無しにどのカードが興味を惹いたかを知るなんて事はできないわけです。1994年始めがIce Ageのリリースだったなら、《Necropotence/ネクロポーテンス(5E/IA)》がカード1枚につきライフ2点になっていたか、あるいは逆にコストが(B)だけになってしまったかも分かりません。《Jester's Cap/道化の帽子(5E/IA)》は収録されていなかったかもしれませんよ。それに、キャントリップのコストが、みんな気付かないで設定ミスされていたかもわかりません。Ice Ageが(一部の人には)長く記憶に残り、客層の心を最後には掴むことができたような、そんなスタンド・アローンとして安定した発進に結びついたこの遅延は、決定的ともいえたわけです。

構成

 Ice Ageのカードを作ること、私が今までの経歴でさせてもらった楽しい経験の一つです。このカード達は3つの期間──まず、始めの頃のグループが基本セットを良くする目的で作ったもの。次に、フィラデルフィアに戻って、最初の委任を受けてから作ったもの。最後に、シアトルでセットの完成目前に作ったもの──を経て作られました。やり始めのころは、エキスパンションを作っているという風になんて考えてはいなかったわけです。何せ、思い出して頂ければ分かる通り、Magicの再翻案というわけですから! バランスに対する責任というのは、思うに、高々1個のエキスパンションだけのものには全然相応しくないんですよ。そう、だからこそ、カードと共によい時間を過ごしてわけです。微視的に、振り返ってご覧になれば、Ice Ageにはデザイン上の哲学を見いだせるでしょう。例えば、キャントリップや累加アップキープや、ライフ支払いもそうですが、コストに関しては多くのプレイ時間を割きました。これがAlliancesにおいても、《Balduvian Horde/バルデュヴィアの大軍(6E/AL)》のようなカードで続いてきたわけです。Arabian NightsThe Darkといった早期のセットには、カードのほうが合わせていくテーマがありました。それに対してIce Ageはカード自体から始まり、そこからクリーチャーの色の均衡といったデザイン上の高いゴールを目指しに掛かったわけです。

 個々のカードが興奮するようなものでも、一般的なゴールというのは退屈です。そこでIce Ageの中でどのカードが一番ベストなんだいと聞かれれば、私は頑なに追い続けたデザインの原理を体現する《Necropotence/ネクロポーテンス》がそれだな、といいたいでしょう。《Necropotence/ネクロポーテンス》はプレイヤーにとって基本的な計算のレートを変えてしまいます。カードとライフはどれほどの価値があるか、です。この計算は、あくまで最高のプレイヤーにしか正しくなしえないものです。総ライフに目もくれないで、手札を一杯にするのに十分なだけカードを引くことを選ぶ「ネクロ」プレイヤーとは何回対戦しましたか? また、《Necropotence/ネクロポーテンス》のさらなる華といえば、その雰囲気──完全に黒の特質を体現したカードといえます。この点で追いつけはしても追い越したカードは未だかつて無いでしょうね。その上にこのパワーは容認し得るかどうか限界は有ります(ないと言い張る方もあるかもしれませんが、ここでは定義しておきます)から、批判する人もある一方では賛成する人もいるわけです。各人がそのパワーについて一意見あるということは、好意的な意見が圧倒していないでという条件を付ければ、その当時までは殆ど無かったのではないでしょうか。

 ええ。そうそれで《Necropotence/ネクロポーテンス》のことは万歳と。しかし、他にもう一つ挙げるとすれば《Jester's Cap/道化の帽子》なんかも大好きですね。これも勿論、特定のカードに頼りっぱなしのデッキを潰す、というデザインの指針に合っていました。しかし、より重要なこととしては、こいつはプレイヤー達に「えーっ、んなばかな」と言わせるようなカードでもあったわけです。まあ、一番目とはどうしても言い切れないわけですが、それでも2枚挙げるとすればAlabian Nightsの土地(※《Library of Alexandria(AN)》か)やAntiquitiesの《Ornithopter/羽ばたき飛行機械》がこの界隈なら勝るのでしょうが、それでも《Jester's Cap/道化の帽子》がデザイン班に与えてくれた達成感は、特にIce Ageのリリースの時なんかは、その2枚ともさしてひけを取らないように思えました。

 さて、明確なゲームプレイ上のゴールを立てた上で作られるカード・セットにおいて、物理や数学を専攻していた古くさいデザイナーが、一番楽しみにしていたことは何でしょう? それは勿論、ネーミングですね。セットを「北欧化」させたくって、北欧の名前や神話に関する本を調べ上げたのを覚えています。《Fylgja(IA)》というものを発見して、そのイメージに合うようなカードを作るというのは楽しかったのですが、それは《Lhurgoyf/ルアゴイフ(5E/8E/IA)》を生み出すのと比べればまだ半分! 特にフレーバー・テキストが作られた後なんか、お互いに顔の筋肉を緩めて「ああ!」("Ach!")なんて叫びながら面白おかしくしていたのが何週も続くのを想像してしまったくらいです。この《Lhurgoyf/ルアゴイフ》の名前は、我々アングロ=サクソン人としては北欧風に聞こえますし、更にはゲームのコンベンションにオスロまで飛んで、プレイヤーと名前の話で語り合う機会があったんです。私が思い出すことのできる限りでは、ノルウェーのクリフ・クラヴィンソン(Cliff Clavinsson)で、彼は古い北欧の物語から取って欲しいと言ってくれたり、その名前の由来を私や友達に教えてくれたりした人ですが、私がIce Ageのデザイン班の一人とは知らなかったようです。酷いスペルミスをした時には、こっぴどく怒られたものです。

 最後の名残惜しさに、ネーミングの話をもう一つしておきましょう。デザイン・開発班は、以前ほどのプロとは言い難く、友人の名前をカード名に借りていました。その莫大なリストからは遠ざかっている今も、《Adarkar Wastes/アダーカー荒原(5E-7E/IA)》や《Adarkar Unicorn(IA)》の名前は友人のアディチャ・アダーカー(Aditya Adarkar)に由来することを覚えています。彼は幾分動揺していたようでしたが、何年前のある日に自分の名前でGoogleの検索をかけてみたら初めて自分の名前が有名になってたのでいい気になったかもしれない、と私は考えているんです。で彼は、お互いの共通点を見つけるべく出会った数人の若いMagicのプレイヤーに対して、こう自分の肩書きを述べたわけです。「《Adarkar Unicorn》『アダーカー(a-DAR-kar)・ユニコーン』が僕から名付けられたって知ってるかい?」 子供達はというと、彼を疑って、嘘を吐いてるとまで言い出したんですよ。『アッダカー』(ADD-a-kar)の発音が違ってら、なんて。

贖罪

 あなた方には今日においてIce Ageのことが、そして素人考古学者でもあるかのように、オリジナルがどうでそこに何が移植されてきたかという点も分かって頂けたかと思います。このセットはやっておくべき磨きが足らず、単純にカード・テキストにある単語の数が多すぎたということもいえます。カードを攻撃的にするためにするプレイテストをどれくらい行うのが適切とかいう先知恵が当時はなかったため、マナ・コストが高額になる傾向にありました。さらにIce Ageは、将来に残せるような原石がいくつもの凝っていました。カード毎の基礎においても、デザイン要素の多くが以前のものですから、そのちぐはぐさは当時の時代の象徴でした。これら全てのことは、Magicが公に発表すらされない頃にデザインされたにしてはまあまずまず、程度の出来でした。

 それでも、Ice Ageの主な遺産は、その後のスタンド・アローンのセットにとって、当たり前のように捉えられています。意識してのことかは分かりませんが、プレイヤー達はカード個々ばかりでなく色々混ざっている状態で与えられたゲームの経験に対して、深い理解と賞賛の意を持っています。デザイナーが鋳て、販売戦略によって焼き直されたIce Ageの出発は、ゲーム全体としてみれば大きすぎる一歩となったのです。これは重要ですが、その新機軸はカード個々だけに留まらず、Magicというビジネス全体としてのIce Ageの位置づけを考えても革新といえるでしょう。それは(もし1つのサイクルに新しいセットが古いセットと連動を起こすよう求められているという条件において)「限定的な」エキスパンションを再版していくというアイデアを思いついたことから来ています。それはゲームとしても、事業としても、大きなアイデアでした。どうかこのことを、次の(※Champions of Kamigawaの)プレリリース・パックを胸を弾ませながら剥く時にも、このことを思い出してくれればと思います。

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