まず、この話題に触れる前に必ずお話ししておきたいのは、ブロックアウトには大きく分けて2種類の流派があり、主に「原作版」「テクノス版」と呼んで区別することにします。原作版とテクノス版はそれぞれ違うゲームルール、ポリキューブの出現範囲を持っており、更に操作方法などの細かいフィーチャーが分かれているという感じになります。他のデッドコピー形の作品(一時期係争に発展しかけた「TAKALITH」などが出来が良く著名ですが、そのほかにもルールが同じ物が雨後の筍のように存在しています)については、余りにも範囲が広く筆者の手に負えなくなるので、ここでは1件の例外を除きブロックアウトの商標が使われている物(則ち、Kadon Enterprisesの許諾を受けて名前を使っていると思われる物)に限定しています。
もくじメーカー | テクノスジャパン, Carifornia Dreams |
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リリース期日 | 1990年2月(北米では1989年10月) |
操作形態 | (国内版)1レバー3ボタン(海外版)1レバー4ボタン(レバーの玉上に1個) |
ルール形式 | ステージクリア型 |
ポリキューブ | 全24種、ステージごとに漸増 |
本サイトで中心として取り上げているのはこちらのブロックアウトです。ステージクリア型のエンドレスゲームであり、1画面エンドレスという原作版とはこの点で一線を画しているゲームです。また、もう1つの原作との大きな違いは、ステージが進むにつれてより複雑な形のポリキューブが出てくるのですが、どれだけ難易度が上昇しても出てこないペンタキューブが17種類存在するという点です。つまりこのゲームで登場するのは、厳選された内容のポリキューブで、適度な難易度が保たれている格好と言えますが、それでも難しいというのが正直なところです。昨年に急激な流行をしたテトリスとは異なって4段消しを連発する爽快感を得ることが出来ず、3次元のフィールドを記憶するという難しさに加え、ひたすらちまちまとフェイス消去を重ねていかないと即死するゲームであったため、人気は今ひとつ盛り上がりに欠けたようですが、操作性自体は悪くなくまた音楽の評価が高かったことが伺えるようです。
この頃は「ダブルドラゴン」などが海外でもヒットしてアメリカ法人を構えるほどになっていたテクノスジャパンですが、そこで何故ブロックアウトに目を付けたのか、今となってはその理由は明確には分からないのですが、その辺りの裏話はClassic 8-bit/16bit Topicsの記事(2005/08/04付)に詳しいことが記載されています。また、Carifornia Dreamsが実はポーランドの会社(正確にはLogical Design Works社の一部)であるということはよく知られているものの、その下請けとしてKaren Computerの前身であるPZ Karen社がオリジナルの開発に関わっているというエピソードまで調べられています。貴重な情報です。
本サイトでは、アルカディアの集計対象となっている国内版(他のバージョンについては話を聞いたことがないため)のみに焦点を当てていますが、海外版とは操作系・スコアシステムの違いがあります(下表)。Set 2は日本版の設定をそのまま4ボタンに変更したような形となっていますが、Set 1はその変更に加えて、ラウンドクリアボーナスが非常に高く設定されています。また、その影響もあり、高い点数を得た時に数字がロールアップされていくのですが、描画単位毎にインクリメントする得点が国内版やSet 2と比べて10倍になっています。また、Set 2が日本版の拡張版であるのに対して、Set 1が異なる趣を持つのは得点だけではないのです。なんと実はノルマの数も違い、Round 5, 6はそれぞれ1フェイス、Round 4, 7, 9, 10についてはそれぞれ2フェイスもノルマが少ないのです! Set 1はとにかくクリアすれば得点の高いゲームなので、面数勝負が加速した状況となっており、日本版やそれにAボタン回転が追加されたSet 2のようなゲーム性とは全くスタイルが違うことになります。
国内版 | 海外版(Set 1) | 海外版(Set 2) | |
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操作体系 | レバー+3ボタン(落下/Y軸/Z軸) | レバー+4ボタン(X軸/Y軸/Z軸/落下:レバーの玉の上) | |
クリアボーナス | 所定倍率×残り空間数 | クリアしたラウンド番号×1,000*1 | 所定倍率×残り空間数 |
点数のインクリメント | 50点ごと/2F | 500点ごと/2F | 50点ごと/2F |
Set / Rd. | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
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Set 2/JPN | 6 | 4 | 6 | 8 | 7 | 9 | 8 | 5 | 8 | 10 | 4 | 5 | 7 | 9 | 8 | 10 | 9 | 6 | 9 | 11 | 5 | 6 | 8 | 10 | 9 | 11 | 10 | 7 | 10 | 12 |
Set 1 | 6 | 4 | 6 | 6 | 6 | 8 | 6 | 5 | 6 | 8 | 4 | 5 | 7 | 7 | 7 | 9 | 7 | 6 | 7 | 9 | 5 | 6 | 8 | 8 | 8 | 9 | 8 | 7 | 9 | 10 |
また、ブロックアウトを含むアーケードのエミュレーション筐体(例として「ミレニアム 1000 in 1」など)でのプレイには注意が必要です。勿論、Japan Setではなく、Set 1などが入っている可能性があるからなのですが、このエミュレーション筐体では、処理速度が向上しているため、実機に存在する処理落ちが正しく再現されないという問題を抱えています。実際に操作をしてみると、非常にきびきびとブロックが動作するため、重厚なプレイ感覚が全く変わってしまうと共に、階段落としに至ってはテクニック自体の正否にも影響してくるため、実機と同じ物と見倣してプレイするわけにはいかないでしょう。
メーカー | テクノスジャパン/ハムスター(PS-GA) |
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リリース期日 | (日本)1994年12月22日 (米国)1996年1月16日 (PS-GA) 2011年8月24日 |
操作形態 | コントローラ(方向キー+4ボタン) |
ルール形式 | CPU対戦・ステージクリア型・1画面エンドレス型 |
ポリキューブ | 全24種、ステージやレベルごとに漸増 |
テクノス版の唯一の家庭用移植が、1994年にPS1で登場した「ジオキューブ」です。このゲームはブロックアウトという名称を使っていませんが、ルールはブロックアウトそのものと言えます。雰囲気はアーケード版とは違って、音楽も華やかでポップな感じになりましたが、プレイステーションの草創期のソフトなのでポリゴンをばりばり使ってみたという感じの、いかにもという時代を象徴するようなゲームの1つでした。
ボタンの対応ですが、4ボタンに対応し海外版と同じ操作ができるようになりました。×が落下ですが、□がY軸回転、△がZ軸回転、○がX軸回転
となっており、海外版の並び順とは異なります(筆者の場合はX軸回転を使わないために、キーコンフィグで□:落下、×:Y軸、○:Z軸、そして余った△:X軸を割り振っています)。海外版のX軸回転が使えるのは良いのですが、落下ボタンが曲者で、所謂「高速の自由落下を開始する」ためのボタンではなく、「押した分だけ落下させる」というタイプの落下のため、落とす量を制御しづらいという難点があります。
好ましい変更としては、キューブの表面のテクスチャを選ぶことが出来るのですが、その中に高さの数字が書いてあるものがあるため、段差の数が色覚異常を持っていても分かり易いという点がよいところです。しかし、一方で視覚的な改悪としては、落下中のポリキューブがワイヤーフレームでは無く半透明の物になったため、非常にその点は残念に思います。また、このゲームは唯一「ネクスト」表示があるという有難いゲームなのですが、その中のポリキューブが固定されているのではなく、枠の中をぐるぐると回転しているため、煩わしくまた形状の判断を難しくさせているように感じます。
ゲームモードは3種類あり、1人用モードは、所謂「テクノス版」っぽいFINITEモード(Round 99までのステージクリア式。1, 20, 50から初期ラウンドを選択可能)と原作版に近いINFINITEモード(規定の単一ピットでエンドレスゲームを行う。3×3×11, 4×4×11, 5×6×11から選択可能)があります。また、対戦に特化したモードでは、アーケード版にもあった2人対戦(ノルマフェイス数はオプションで選択可能)の他、8人のCPUキャラ(ジオ・ファイター)と戦うVS. CPUモードがあります。対戦相手の8名は下に示すキャラクター付けが為されており、ピット寸法や戦法等も若干異なっています。ローポリで描かれたキャラが頑張って動くのも見所と言えば見所です。なお、CPUは総じて4S, 4T, 4Lなどの複雑なテトラキューブの操作にはかなり時間を要するようです。
通常の1人用は、非常に地味で、FINITEモードではノルマのフェイスと底面積の大きさからかなりの持久戦、つまり苦行を強いられます。また、得点システムについても非常に大雑把で、特にブロック・アウト成立時には得点が101倍になるという馬鹿馬鹿しい仕様になっています。以下が得点の一覧です。実際のプレイングでは、ラウンドを10超える毎に新しいポリキューブが導入されていき、60台で5F, 5X, 5C, 5Hなどの扱いが最高難易度のポリキューブが立て続けに出現するため、ラウンド60以降の難易度で頭打ちになると考えてもよいでしょう(筆者はラウンド69で死亡が最高です)。
得点方法 | 獲得点数 | 備考 |
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フェイス消去 | 50×2^n(n:同時消去段数) | 最小100点~最大でクインティプルの1,600点。 |
ブロック・アウト | 5,000×2^n(n:同時消去段数) | 同、10,000~160,000点。消去点は別途入る。 |
ステージクリア | 500×クリアしたラウンド番号 | 次のステージに入った時に加算されている。 |
メーカー | テクノスジャパン |
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リリース期日 | 発売されず(クレジットは1990年) |
操作形態 | コントローラ(方向キー+2ボタン?) |
ルール形式 | 不明 |
ポリキューブ | 不明 |
ファミコン版については、開発中止されたという情報は様々なサイトに当時の情報として残っていますが、その画像についてはごく最近にNES Worldという海外のサイトから情報が得られたという状況です。Pix 1, 2というところで2点だけながらスクリーンショットを見ることが出来ますが、どうも見た感じは無理移植なのではないか、と思ってしまいます。また、ボタンが2つしかないのでどうやって回転するのか、という問題もありそうです。Lynx的に回転と十字キーを押させるか、メガドライブのようにセレクト・スタートにキーアサインをしてしまうか、どちらの方法でも難しいものになっていたことは間違いないでしょう。
2012年11月、どのような経緯かは不明ですが、Prototype版と思われるROMの動作状況が確認されています(7.05 Sample Version 1)。この動画からは、ポリキューブがアーケード版のBボタン、Cボタンと同じ回転をしている様子が捉えられており、また1プレイヤーモードや対戦もあるようです。更によく見ると、対戦モードではシングルのブロック・アウトが成立する場面でノルマが倍の2つ減っている様子が窺えます。その意味ではアーケード版の趣を損ねることなく、ファミコンでもきびきびと動くのだということを前提に作成されているであろう事は分かります。これがもし完成していたら、その影響力は当時の状況を見ればさほどインパクトは無かったかもしれませんが、少なくともブロックアウトというゲームがFCにも存在したという記憶と共に知名度が高まっていたでしょう。返す返す発売中止の決定が残念です。
メーカー | Carifornia Dreams, PZ Karen |
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リリース期日 | 1989年 (DOS. Amiga, Commodore 64/Plus 4, MacIntosh, Apple II GS) 1990年 (Atari ST) |
操作形態 | キーボード(カーソル+4ボタン) |
ルール形式 | 1画面エンドレス型 |
ポリキューブ | 全41種、3セットから選択 |
ブロックアウトの歴史は元はここから始まりました。原作のクレジットにはPZKと、PZ Karenの名前がここで窺えます。そして、原作者のAlexander Ustaszewski、またバージョンによってリードプログラマーのMirosław Zabłockiの名*2がタイトルにも映し出されています。もともと海外では評価が高い作品(実現性や、知育的な面もあるという風な受け売りもありました)なのですが、特に欧米のコアなプレイヤーに受け容れられ、現在も少なからぬファンとスーパープレイヤーがおり、ドイツを始めとした場所ではブロックアウトをスコアアタック大会として実施していた形跡もあるようです。DOS版が現在なら入手可能ですが、DOS以外のコンピュータにもリリースされています。移植されているハードは分かっている限りこれだけあります。
さて、本家Blockoutの特徴について見ていきましょう。
操作体系は、キーボードのテンキーが方向、落下ボタン、そして回転は3ボタンをサポートしており、X軸/Y軸/Z軸の3軸回転が使えます。
ここから紹介する基本ルールは、「原作版」である全てのプラットフォームに共通するところです。先ず始めにゲームモードですが、アーケード版のステージクリアモードでは無く、1画面のエンドレスで争われます。つまり1つの寸法が決まったピットを選択し、更に使われるポリキューブの種類を選択、あとは開始するレベル(速度)をセレクトして無限に続く地獄へと挑みます。
次に選択可能なブロックセットです。以下に示すFLAT, BASIC, EXTENDEDという3つの難易度があります。
BLOCK SET | 含まれるポリキューブ |
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FLAT | 1I, 2I, 3I, 3L, 4I, 4L, 4T, 4O, 4S (テトラキューブ以下で、かつフラットなキューブ) |
BASIC | 3L, 4T, 4S, 4L, 4Y, CS, CZ (ソーマキューブ*3に使われる7種類のポリキューブ) |
EXTENDED | 全41種のポリキューブ(テクノス版で登場しない17種も含む) |
更にピットの縦・横・高さを任意の値から指定できます。基本的には縦横が3~7、高さは6~18という範囲まで選べます。更には、ブロックセットとピットサイズを一度に選べるプリセットの難易度も3種類用意されており、すぱっと遊べるようになっています。特にOut of Controlの難易度は気が狂れるほどの難しさとなっており、ペンタキューブのキラルなどを含む複雑なポリキューブが情け容赦なく、しかも0から9までレベルが上がり、テクノス版のボーナスステージ並みの速度で通常のキューブが降下してくるため、これを遊べる人がいることが俄に信じがたいものです。
PC版原作の面白いところは、デモ機能が備わっている物があるということです。デモということで、コンピュータがデモンストレーションのプレイをやってくれるという機能です。パソコンのスクリーンセーバー代わりの、一種の清涼剤的な役目かも知れません。
セッティング名 | BLOCK SET | PIT SIZE |
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FLAT FUN | FLAT | 5×5×12 |
3-D MANIA | BASIC | 3×3×10 |
OUT OF CONTROL | EXTENDED | 5×5×10 |
作者 | Jean-Luc Pons (Freeware) |
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リリース期日 | 2007年6月24日 (SourceForge) |
操作形態 | キーボード(カーソル+7ボタン) |
ルール形式 | 1画面エンドレス型 |
ポリキューブ | 全41種、3セットから選択 |
原作に敬意を表して作られたのがこの2007年版のブロックアウトIIとなります。見てくれも勿論綺麗になっていますが、こちらはフリーソフトになった上に、Blockout IIをミラーしているBlockout.netでオンラインランキングを実施しており、全てのピットサイズ・ブロックセットの組み合わせに対してランキングを送ることが出来るという凄まじい仕様になっています。
更に、ボタンが回転6ボタン対応となっています。つまり、正回転(反時計回りになります)の他に3軸分の逆回転も使えるようになり、非常に難しいですが最適化が完璧ならば凄まじい速度での操作により磨きが掛かります。原作版のBlockoutは、IもIIもレベル上昇によるスピードが著しく速くなる上、識別の難しいブロックも出てきうるので、テクノス版とは全く展開が異なってきます。
メーカー | Electronic Arts, Carifornia Dreams |
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リリース期日 | (日本)1991年11月1日 (米国)1991年10月1日 |
操作形態 | コントローラ(方向キー+4ボタン) |
ルール形式 | 1画面エンドレス型 |
ポリキューブ | 全41種、3セットから選択 |
名門EAの移植という変わり種です。セガはテトリス事件(家庭用の版権が降りていないためにメガドライブ版に移植作を作れなかった)の影響もあり、その代替品として求めていたら裏切られたというエピソードを良く聞きます(但し、筆者としてはPS2のSEGA AGESで移植されたメガドライブ版テトリスの出来に肩を落としたことも含め、余り恨みがましい論調を快く思ってはいません)。
実際にEA版の物は出来が悪かったわけではありませんが、立体の処理がチープなので見分けがAC版よりも付きにくいという欠点はあったようです。唯一のBGMであるオープニングの曲や独特すぎるポリキューブの操作音にはかなりのインパクトがあります(もともと原作版に準拠したブロックアウトは、プレイ中のBGMがありません。そういうわけではテクノス版は、ラウンド制を取ったことでBGMの必要に駆られたと思われますが、そこも独特だったと言えます)。
ゲームルールは基本的にPCで出ているのと同じですが、ボタン操作が特殊です。A, B, CボタンがAC海外版のA, B, Cと同じ回転をします。そうすると、落下ボタンはどこへ?、という話になりますが、これはスタートに割り当てられています。また、そうすると今度はポーズはどうするんだ!?、ということになりますが、これはA+C同時押しという妥協案によって実装されているようです(ポーズ解除はAのみでよい)。
EA版はこのほかにも、携帯のアプリでTetrisとBlockoutを2-in-1にしたアプリも出ているようですが、その詳細はまだ調べていません。
メガドライブ版は、AC版と比べて、以下の点が違っています。特に回転軸がキューブ内部ではなくコーナーに存在するという点は、PC版から続く本編でも同じ事が起こるのかはまだ検証していません。
[2013/02/14] メガドライブ版のブロックアウトの仕様に対応したエディタをコーリャンさん(@vst_koryan)に作成して頂き、SALさんの本家エディタがMD/Lynx版に対応を行い、そちらが完全版になりました。ご両人に御礼申し上げます。
メーカー | Atari, Carifornia Dreams |
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リリース期日 | 1991年12月30日 |
操作形態 | コントローラ(方向キー+2~3ボタン) |
ルール形式 | 1画面エンドレス型 |
ポリキューブ | 全41種、3セットから選択 |
カラー携帯機としてはゲームギア以上に厳しい風当たりを受けたリンクスですが、ここでもブロックアウトは登場しています。なんと言っても、小さいながら原作のブロックアウトの世界を再現している努力には驚かされます。また、ワイヤーフレーム描画の立体をあのドットピッチでぬるぬると回転させようとする技術は、無茶移植とはいえかなりのものです。
パッケージと説明書はAtariAgeより見ることが出来るようです。
リンクスはメインのボタンがA/Bしか無く、最低でも落下ボタンの他に2ボタンは必要とみえるゲームなのですが、一体どうやって回転をするのでしょう? 実は、ボタンの構成が落下ボタンと、回転(補助)ボタンと分かれており、回転ボタンは単独で使用するのではなく、回転ボタンを押しながら方向キーの上下左右を押すことで実際に回転が行われます。これだけならばポリキューブの回転方向はX軸(上下いずれか)とY軸(左右いずれか)のみですが、「OPTION 1を押しながら左右ボタンまたはA+Bの同時押し」によってZ軸の回転をサポートしています。なお、A+B同時押しの場合に限り反時計回りにしか回転できませんが、方向キーとOPTION 1またはBボタンのいずれかを組み合わせた場合は、上下または左右によって2方向の回転が出来るため、この小型機にも拘わらず6方向回転全てをサポートということになります。同時押しで回転させるボタンを作ることによりリンクスのメインボタンの少なさでも3軸回転の操作体系を完全に実現しています。侮る勿れ、凄まじい執念の移植と言えます。また、下記の動画にもある通り、PC版でもお馴染みのデモモードが搭載されています。ただし、選択できるピットは底面積は縦横3~5まで、高さは18ではなく12までと小さくなっていますが、こればかりは致し方有りません。
リンクス版は非常に頑張った移植ではありますが、何しろ携帯機としては極端に短い電池寿命、そしてそれ以上にハード自体の大きさがゲームの難易度を上げており(方向キーの押しっぱなしが効かないので、十字キーを連打せねばならず腱鞘炎に悩まされます)、また小さな画面の中で1~3段目に濃淡だけが変わった青色のピットが続くため、識別が少々難しい難点があります。しかし元々ブロックアウト自体がそれほど長くプレイできないという点を考えれば、電池寿命についてはさしたる問題は無いでしょう。寧ろ方向キーの連打が必要な点は、ゲームボーイ版のテトリスをプレイしたことのある人なら分かるかも知れませんが、最高レベルの9で殆ど意のままに動かすことは不可能です。それでもこの時代に携帯機では唯一*4となる純正のブロックアウトを世に送り出した意義は大きく、またリンクスの存在自体からも、非常に希有な作品として一瞥の価値は十分にあるものと思います。
[2012/07/14] お詫びの続報: リンクス版を所持されているR.Bさん(@RB_H27A)より、リンクス版の操作について正しい情報を頂戴致しましたので、訂正しました。OPTION 1ボタンについては、英語の説明書にて方向キーと組み合わせるという情報が無く、また、Z軸の回転方向が1通りしかないというレビューの内容でしたが、それらが誤っていることを検証して頂きました。誠に御礼を申し上げます。その後、筆者も無事にLynx本体を入手し、動作を一通り確認の上再レビューしました。
作者 | Robb Andrew Young |
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リリース期日 | 2009年12月11日 |
操作形態 | タッチパネル |
ルール形式 | ラウンドクリア型 |
ポリキューブ | 全41種、4セットから選択 |
iTunesから購入できるiOS用のアプリで、作者はRobb Andrew Young氏です(オフィシャルサイト)。このアプリはテクノス版の映像や音楽などが再現されており、更にはアイコンがブロック・マスターになっているというトドメつきなので、おっと思ってしまった人も多いのではないでしょうか。また、好みの問題ではありますが新しいバージョンのBGMにも切り替えられます。見た目からしてアーケード版の移植と思われがちですが、そう断じるには全く性質が異なるため、違いを列挙していきます。
以上のように、アーケードの移植とは到底言えないものではありますが、それでも興味深いのは、やはりタッチパネルにより、多くとも指2本でポリキューブが自在に回転でき、ドラッグすれば移動になり、後はダブルタップで自動落下・固定という直感的なアクションでプレイできる、という新しい感覚が得られることです。またゲームの途中中断が出来るのも嬉しいところです。タッチパネルのドラッグの猶予時間なども変えることが出来るので、移動がなかなか上手く行かないな、と思う方は自分に合う設定を見つけることが大事です。
また、最新版では対戦プレイも可能になったそうです。このゲームの対戦は余り楽しいとは言えないのですが、そういうツールにもなるというのは面白いことかもしれません。
iOSのGame Centerに対応しており、各モードのランキング(Overallは一番高いモードの最高点)が利用できるほか、実績が50種類有ります(幾つかは条件が非公開になっている隠し実績のようです)。その多くは現実的にはものすごく時間が懸かるか、達成不可能なものばかりです。実績は無視するとしても、ランキングで高い位置に付けるには、階段落とし自体が使えず、消去点も殆ど役に立たないために、ドロップを早めにすること、そしてクリアボーナスを最大限に有効活用する……つまりゴミを残さずクリアするのが一番です。テクノス版と違って得点がかなり高くなる要因があり、ピットのランダム生成によって体積が優に300以上となるピットがある(6×6×10で360)上、レベルがかけ算されるとなると後のステージでは得点が10倍などになったりします。ひたすらちまちま消す方が、このゲームでは有利です。
実績名 | Pts. | 条件(アイコンのモチーフ) | 実績名 | Pts. | 条件(アイコンのモチーフ) |
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Newbie* | 10 | 単一ポリキューブで、1フェイスを消した。(1I) | Two-Faced* | 10 | 単一ポリキューブで、2フェイスを消した。(2I) |
Face Lift* | 15 | 単一ポリキューブで、3フェイスを消した。(3I) | Losing Face* | 20 | 単一ポリキューブで、4フェイスを消した。(4I) |
Square Wave* | 20 | 単一ポリキューブで、5フェイスを消した。(5I) | Off the Grid* | 10 | 1人用ゲームで敗北した。(Game Overの文字) |
Blockout* | 10 | 1面消しのブロック・アウトを達成した。(3×3ピットに青の層が充填) | Double Blockout* | 10 | 2面消しのブロック・アウトを達成した。(3×3ピットに紫の層が充填) |
Triple Blockout* | 10 | 3面消しのブロック・アウトを達成した。(3×3ピットに緑の層が充填) | (非公開実績)* | 15 | (4面消しブロック・アウトか?) |
(非公開実績)* | 20 | (5面消しブロック・アウトか?) | Getting to the Point | 10 | 累計スコアで1,000,000点を獲得した。(3L) |
Point of No Return | 15 | 累計スコアで10,000,000点を獲得した。(?) | Face Off | 10 | 累計で1,000フェイスを消去した。(4T) |
Multifaceted | 15 | 累計で25,000フェイスを消去した。(?) | Level-Headed | 10 | 累計で300レベルをプレイした。(4L) |
Plane Simple | 15 | 累計で5,000レベルをプレイした。(?) | Piece of Mind | 10 | 累計単位キューブ数で40,000個を落下した。(5T) |
Piece of the Action | 15 | 累計単位キューブ数で150,000個を落下した。(5R) | Blockbuster | 10 | 累計でブロック・アウトを25回達成した。(?) |
Blockmaster | 15 | 累計でブロック・アウトを4,096回達成した。(?) | You got Game | 10 | ゲームを50回プレイした。(5W) |
Gamesmanship | 15 | ゲームを400回プレイした。(?) | Time and Space | 10 | ゲームを3時間以上プレイした。(5Y) |
Time after Time | 15 | ゲームを15時間以上プレイした。(5C) | Race against Time* | 10 | あるレベルを1分以内にクリアした。(5P) |
Level Best | 10 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中にレベル15に到達した。(5N) | Level Playing Field | 15 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中にレベル40に到達した。(5X) |
Point of View | 10 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中に50,000点を獲得した。(LZ) | Tipping Point | 15 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中に150,000点を獲得した。(LS) |
Flat Out Awesome | 10 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中にブロック・アウトを10回達成した。(5H) | Beyond the Basics | 15 | FlatまたはBasicの1回のゲーム中にブロック・アウトを50回達成した。(?) |
Extended Play | 10 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中にレベル5に到達した。(TS) | Over Achiever | 15 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中にレベル20に到達した。(SZ) |
Spatial Recognition | 10 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中に20,000点を獲得した。(SS) | Gridlocked | 15 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中に100,000点を獲得した。(?) |
Dimensionally Transcedental | 10 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中にブロック・アウトを10回達成した。(?) | Null and Void | 15 | ExtendedまたはGradedの1回のゲーム中にブロック・アウトを25回達成した。(?) | Excelsior* | 10 | 対戦で1回相手に勝利した。(You Win!の文字) | (非公開実績)* | 10 |
Game Face | 10 | 対戦モードにおいて累計2,500フェイスを消去した。(?) | Face to Face | 15 | 対戦モードにおいて累計10,000フェイスを消去した。(?) |
Square Off | 10 | 対戦モードにおいて累計単位キューブ数で50,000個を落下した。(?) | Gravity of the Situation | 15 | 対戦モードにおいて累計単位キューブ数で250,000個を落下した。(?) |
Block Party | 10 | 対戦モードにおいて累計でブロック・アウトを100回達成した。(?) | Bottomless Pit | 15 | 対戦モードにおいて累計でブロック・アウトを250回達成した。(?) |
Round Trip | 10 | 対戦モードを125回プレイした。(?) | Rounded Up | 15 | 対戦モードを500回プレイした。(?) |
Times Square | 10 | 対戦モードを5時間プレイした。(?) | Time Lord | 15 | 対戦モードを25時間プレイした。(?) |
ブロックアウトとは異なるものの、3次元空間の中にポリオミノやポリキューブが登場する類似形式の作品としては、テトリスの産みの親であるアレクセイ・パジトノフ氏がプロデュースした、3次元空間を使うが底面のみを利用したタイプのテトリスと表現すべき作品「ウェルトリス」("Welltris", 1989-1991)が有名でしょう。奇しくも同じ年に登場したブロックアウトとは、若干異なるアプローチに立っており、単純に論理的拡張としなかったのは、パジトノフ氏が「ブロックアウト」をプレイして、ワイヤーフレームで描かれた図形を変形・落下させて消すという煩雑さが生理的に受け容れられず脳への負荷が高すぎると考えた*6ため、おそらく井戸のような形に見立てた底面を使い、立体を解釈するような難易度を避けつつも立体的なゲーム感を表現するためにそのようなシステムにしたと考えられます。
また、任天堂の不遇のハードウェアであるバーチャルボーイに登場したT&E SOFTによる「テトリス3D」*7("Tetris 3D", 1996)も、テトリスを3D空間に拡張した作品として密かに名前を知られていました。このテトリスは各レイヤーの断面図が表示され、どの段にどんな地形が配置されているかは見えますが、ブロックはポリキューブのように隣接していない奇妙な形状の物や、それどころか完全に分離したブロックまで降ってくることがある*8など一筋縄ではいかない作品のようです。
管理人がこれらのゲームについて一定水準の知識を有さないためここで踏み込んだ紹介は出来ないのですが、これを含んだ詳細なレビューについては、英語の情報ながら101 Hardcore Gamingにて、Blockoutとの対比で記載されています。
[*1]この点数はRound 50の50,000点で打ち止めとなる。それ以降のラウンドは一律50,000点。
[*2]筆者はポーランド語に明るくないが、おのおのアレクサンデル・ウスタシェフスキ、ミロスワフ・ザブウォツキと読むのではないかと思われる。前者のファミリーネームは「ウスタシェツキ」にも近い発音か? "szewski" [Wiktionary: en]には靴の修繕屋という意味合いがあるらしいので、そういう家の由来かもしれない。また、一部のタイトル画面では後者のファーストネームをMirek(ミレク)と綴っていることがあるが、これはMirosławの省略形の愛称である。
[*3]Soma Cube [wikipedia:ja]. デンマークの数学者Piet Heinの作とされる。テトラキューブ以下の立体のうち、直方体でないもののポリキューブのみを使用する。これらの立体はうまく組み合わせると1辺3の立方体(体積も丁度27)になる。
[*4]EA版のTetris Blockoutは、テトリスとのバンドルのためフラットなテトラキューブしか落下しないものと思われる。EA Mobileのプロダクト情報を参照。
[*5]実績のアイコンのモチーフは、英数2文字しか書いていない場合、ポリキューブの名称(コード)である。実績名は、末尾に*が有るものは非公開実績。
[*6]Tetris Forever(Digital Eclipse, 2024)に収録された、ウェルトリスの紹介ビデオにて本人の言が確認できる。
[*7]同作は日本では発売されていない。
[*8]2次元上の、チェスのキングや王将の動きのように「斜めに接続することも隣接と認めて考える」場合の図形を擬ポリオミノ(pseudo-polyomino)と呼ぶ。異称としてポリプレット(polyplet)や、先程のキングの動きを踏まえてポリキング(polyking)と呼ぶこともあるらしい。但し、N次元以上の同旨の物体については確たる呼称はなく、恐らくN次元の擬ポリオミノと呼んでいるのであろう。Tetris 3Dでは、階段状に斜めに3個並んだ擬ポリキューブと呼ぶべき物体が登場するほか、さいころの4の目のように4個の単位キューブが3×3の正方形の四隅を占めた状態で、1つのネクストとして登場するようである。