BLOCKOUT: ポリキューブ概要: 1I


回転法則図

回転ボタンを押しても形は不変。但し、描画は行われる。
1Iの最短回転経路
A0 neutral

全ての基本となり、レバー操作のみに集中できる「単位キューブ」

 モノキューブ(monocube, キューブ「1個で構成」されていると考えるため)、あるいは単位キューブ(unit cube)とも呼ばれる1Iは、最も扱いやすいキューブであると共に、このゲームの全ての根幹を為しているものです。これが最大で5個連なって大きなポリキューブが出来ているのですが、この1Iが単独で出てきた場合は、その使い易さ、邪魔にならないという点では他のどのポリキューブよりも優れています。
 その最大の特徴は、回転した時の形が全く同じであるということです。2Iですら回転が複雑さを持つのにも拘わらず、BによってもCによっても回転が変わりません(海外版Aも同様)。これは、5個以内のキューブの連結によって構成されたポリキューブでは唯一で、他のポリキューブは全て2つ以上のかたちが存在します*1。本サイトでは冒頭の「ポリキューブ解説」にて詳しく解説します。
 さて、このゲームで使用の上では全くこつも何もありません。回転の必要が全くありませんので、最適な場所をレバー操作のみでいつでも埋めることを心がけます。特に、動ける範囲の狭くなっているレベル5の状況においても、これを引けば難しい位置を非常に安全に補填できるため、あと1マスを埋めるだけでクリアというところで引けた時の感慨は大きなものです。
 しかしながら、このキューブにも欠点があるはずであり、その最大の欠点とはなんと言っても「出現率の低さ」に他なりません。冷静に考えれば、1Iの出現率の高いブロックアウトがあるとすれば、棒しか出てこないテトリス並にナンセンスなゲームとなるのは間違いありませんし、他のキューブと組み合わせての妙が醍醐味であるため、出現率はごく初期のステージを除けばかなり抑えられていますし、面が進むにつれてそもそも1Iが出てこないラウンドも多くなっていきます。とりわけ、Round 20スタート(EXPERT)のプレイヤーはRound 40までの2周ある難関をほぼこのポリキューブ抜きで戦うことになります*2

 このキューブは基本的な落下+レバー操作を覚えるのに適しています。いわゆる典型的な「スライド入れ」を見ていきましょう。Fig. 1、Fig. 2ともに1〜2コマ目は断面図を示していますので、3コマ目から実際のブロックの操作が入ります。
 Fig. 1は、Aを押してから、右に入れるだけです(Aでの落下中は、Aを押したのと同時にレバーを入れない限り接地まで上下左右の要素が入りません[src:SAL B4-2])。1Iはこのように最小の隙間に入れることが出来、応用度が高く、復活に重宝しますが、その出現率の低さから、1Iでないと埋まらないような隙間で神引きを願うのは得策ではありません(なお、この場合は2Iの回転入れで埋めることも出来ますが、直接差し込む方が良いことが多いです。詳細は2Iの項を参照)。また、強制落下をするAボタンを入力した場合は、落下後の接地および階段落としの接地直後において、レバーを入力できる有効フレーム数が限られるため、Fig. 2のように、右3マス分をスライド移動しようとしたのに途中で止まってしまう可能性があることを念頭に置いて下さい。Fig. 2の場合に隙間の奥まで1Iを滑り込ませるには、自由落下で高さ2に達するまで待ち、そこから右を溜め続けてスライドするのが正しい方法です。1マスしかスライドしなくてよいと分かっている場合以外は、Aを絶対に押さないようにしましょう

Fig. 1
Fig. 2

軽さ故に点数に結びつかないことが多いが、階段落としが大きな例外

 1Iを使ってスコアを稼ぐ場合は、消去点がどう頑張ってもシングルが限界です。更に、落下点はポリキューブの大きさに比例して高くなる為、落下点も一番安いというのが1Iの特徴となります。しかし、果たしてそれ故に1Iは稼げないポリキューブなのでしょうか? いいえ、その小ささ故のデメリットを有り余るほど補えるのが階段落としというテクニックです。このテクニックは、特に後半で消去点が殆ど稼げなくなってしまう時でさえ、理不尽なほどに点数が得られるメカニズムなので、1Iを使ってその原理を確認すべきものです(あくまでもあなたがスコアラーならという前提の話ですが)。
 Fig. 3-4のような状況をシミュレーションしてみましょう(ここでは、寸法4×5×8の末尾7面台を例に取る)。
 階段落としは2回目以降の自由落下を全て100点に置き換えるのですが、点数計算の式から、通常の自由落下の点数は段数×構成キューブ数で求められるため、大きいほど上がる落下点が、固定点の100点で置換されます。ということは、相対的に比率の高くなる小さいキューブほど、階段落としの稼ぎが生きやすいのです。Fig. 3の例を見てみると、通常落下(a)7点に対して階段落とし落下(b)は700点となり丁度100倍の点数となるのに対し、Fig. 4の例で2Iを使った場合と対比しますと、通常落下(a)14点に対して階段落とし落下(b)は同じ700点しかなりません。点数比にすれば2倍の差が付きます。更に、4bでは「臨死階段落とし」*3を実行していますし、リスクの高い運び方となります。これよりも重いキューブならば更に階段落としの機会損失が発生しえますし、ペンタキューブとモノキューブとを比べた場合は、比率上5倍もの差が出ることになります。
 また、得点比の問題だけではなく、ブロックの体積が小さいポリキューブであれば、より多い個数を配置することが出来るため、小さく(軽く)、小回りがきき、更に階段落としの得点が跳ね上がるとなれば、これを上手く使わなければハイスコアラーとして後れを取ってしまうこと間違いありません。
 このように、結局軽い1Iは何でも出来る上に、点数まで多く稼げるから、小さいブロックを引けば勝ちじゃないか、と思うかもしれませんが、実は1Iが逆に邪魔な面がたった1つだけ存在します。それはなんとボーナスステージです。ボーナスステージは30秒間に2×2の底面積のフィールドで出来るだけ多くのフェイスを消す特殊なラウンドですが、ボーナスステージに限りブロック・アウト(全消し)によるスピードダウンが無い上、レベルは使ったキューブの数に応じて上がっていく為、大きいブロックが降ってくるほど消せるフェイスの数が多くなるチャンスが高いと言えます。しかし、序盤で1Iなどの軽い物を連打されてしまうと、降ってくる単位キューブの絶対量が下がり、ボーナス点が落ちてしまいます。しかも、1フェイス当たりのボーナスは破格の1,000点! 先述の階段落としの比ではありません。そのため、1Iが常に偉いということは実はないんだという所も、アーケード版ブロックアウトのよくできた? ところなのかもしれません。実は、ブロックアウトは非常に計算し尽くされたゲームバランスを持っていますが、それは別のコラムに譲ることにしましょう。

Fig. 3a
Fig. 3b
Fig. 4a
Fig. 4b

高次周における軽いブロックは、何所に置くかが非常に悩ましい

 Round 25から、1Iは殆ど全ての面で出てきませんが、Round 41で復活します。Round 41〜50は、ピットの寸法の都合絶対に出て来ないものを除いて全てのポリキューブが降ってくる可能性がある「オールスター・ラウンド」であり、そこで凶悪なブロックが畳みかけてくる中の1Iや2I、3Lといった軽量級は、丁度良い置き場所などいくらでも見つかる為、逆にどこに宛がうべきなのかを真剣に考える必要があります。例えば、「5Xに対する安全な受けが無い」「4Oを連打されると置き場が無くなる」などといった場所の補修に使うなどの対策が挙げられます。
 Fig. 5をご覧下さい。Fig. 5aの一手は、上級者がよくやる十字確保の場面の例です。左に移すか右に移すかは他のブロックの出現率の兼ね合いもありますが、慣れている移動の仕方によって配置は分かれるのではないでしょうか。立てた時に5Qなどの立体ペンタキューブの移動を妨げにくい左に配置したい、あるいは4Lや5Fを引いた時にCボタン1回で十字受け振り替えの可能な右側に置く方がいいと考える人もいるでしょう。そして、更に意見が分かれそうなのは4O連打に対抗したいFig. 5b, 5cのパターンです。もしこの次に4Oを100%を引くとしたら、5bの[(1,1)]に置きたい人が多いのではないかと思います。[(1,3)]に置いた後にできた青の1×2面に4Oを乗せると、[(3,3)]付近の穴が狭くなってしまい、立体ポリキューブに非常に脆弱な形になるからです。しかし、このゲームにはネクストが無いのです。全くの(プログラム上で作った)乱数で決まるたった1つの可能性に固執してはならないので、例えばもし4Yや5Kのようなブランチ系が来ると、今度は[(1,3)]の地点が2穴にならないようにそこに1Iを置く5cの選択肢にも正当な理由があるわけです。この手を取った時には5Cの差し込み手が使えなくなるなど、一長一短な選択であることは変わりありませんので、裏目を引いた時に慌てないようにしなければなりません。
 このようにたった1マスの補填でも、隙間が出来ないのは勿論1Iの素晴らしい所なのですが、一部のケースでは可能性が1通りに定まることはありません。9割近く有力な手がある場面もあるかもしれませんが、一方でどちらの手にも良い点悪い点がある複数択のシーンでは、自分の読みを過信しすぎないこと、置きやすさを上手く利用して十分時間を使い、それで次の手が良かった時だけでなく、裏目になった時を考えることが出来れば、ブロックアウトはあなたに全く新しい姿を見せてくるでしょう。

Fig. 5a
Fig. 5b
Fig. 5c

総括

 1Iはブロックアウトの基本中の基本である簡単なブロックで、ミス置きのダメージも大きくありません。その小さな形状は隙間の補修などのレアな場面には勿論のこと、特定のブロック対策の布石としてほぼ無駄にならないプレースメントが可能です。更に、高得点を狙える階段落としテクニックでも最も優遇されているという大きな利点を備えており、小さいポリキューブほど有利である理由の一つとなっています。
 しかし、出現率という壁によって、特にRound 20以降はそれを期待するプレイングは阻まれています。ネクストの見えないブロックアウトでは、運否天賦に任せることが大きく裏目に出ます。このブロックを引いた時には、高次面で特に貴重なブロックであるため、その使い方を見極めることが大切です。

[*1]同じ性質を持つキューブの例として、5Xの上下にキューブを付け足した7個組のキューブなどが挙げられる(1Iに次いで2番目に小さい)。
[*2]Round 25〜40は、Round 38を除き1Iが全く出現しないとされる。しかしRound 41〜50では全て1Iが4%以上の確率で出現するようになる。また、末尾6面台ではRound 46で初めて1Iが登場する。[src:SAL B7]
[*3]天井蹴り([src:SAL B3-2])の制約を避けるため、Fig. 4bの2Iをその場で3回転(BBB)しなければならない。しかし、3手目の状況で階段落としの操作に失敗すると、ピットの天井を突き抜けることによる窒息条件を満たし、即死となる。そのような段でAを押し、そこから1段落として余剰の100点を稼ぐことを本サイトでは俗的に「臨死階段落とし」と呼ぶことにする(3Iの項の本文でより詳しく説明する)。また、Fig. 4bの最後はBで階段落としが出来そうな形に見えるが、その回転では(回転軸が異なるため)1段の落下とならず、階段落としの得点は700点で終了である。


目次: 1I | 2I | 3I | 3L | 4I | 4L | 4T | 4O | 4S | 4Y | CS | CZ | 5I | 5J | 5Y | 5X | 5T | 5L | 5C | 5P | 5Q | 5K | 5H | 5F
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