BLOCKOUT: ポリキューブ概要: 5I


回転法則図

L0はC回転が不変。A1はB回転が不変。
5Iの最短回転経路
A0 neutral
L0 B A1 C

唯一末尾5面台にプレイヤーを待つ、文句なしの史上最長ポリキューブ

 ブロックアウトで皆さんの頭を悩ませるポリキューブの中でも、最も多彩なる殺人技を持つのが最も複雑な形状であるペンタキューブ(pentacube, 5個の単位ブロックで構成されたポリキューブのことで、このゲームでは最多)であり、その中でも長さが5という、全てのパラメータを長さに割り振ったようなポリキューブこそが5Iです。
 この5Iの最大の特徴は言うまでもありません、長さが5ということは、その時点で既にピットの底面積が5×5以上でなければ登場することすら出来ませんが、アーケード版では唯一10n+5面がそのようなピットを持っているため、Round 5, 15, 25,...という周期でのみ出現する、稀なポリキューブとも言えます。しかし満を持して登場するだけに、そのステージ内の出現率はかなり高い傾向にあります。Round 5〜45までの出現率は、8%, 15%, 12%, 12%, 8%となっており、Round 5については、他の出現ポリキューブと比べると5Lに次いで低く、導入的な意味合いが強いのは否めませんが、そこからRound 15以降になると最多もしくは2位(タイ含む)の出現率を誇り、時には連続出現をして難しいフィールドで妨害してくる可能性が大きくなっていきます。([src:SAL B7])
 回転の動作は3Iに準拠しており、奇数の棒のバリエーションは常に通常(A0)、Bボタン(L0)、Cボタン(A1)の3通りです。その操作自体には迷う余地がありませんが、そもそも登場するピットのことを考えれば、5×5×7と非常に広く天井の低いラウンドにおいては、その長さが仇となり、大袈裟でなく死活問題に直結します。このページでは、何故5Iが恐れられるペンタキューブなのかを紹介していきます。

5Iを高さ1として寝かせるための場所を早急に確保せよ

 そもそも、5Iはどのような場面で「有効」なのでしょうか? 勿論、フェイスを消すためのポリキューブが25個と非常に多い5面台の盤面においては、そのうちの1/5を埋めることが出来るフラットなペンタキューブはゲームテンポを非常に速めてくれ、地形の数多い選択肢を減らしてくれるため、非常にそれ自体がゲームを作りに行く攻撃的な手ということができます。しかし、5Iは余りに要求が極端です。何故ならば、寝かせるだけのスペースがなければ、特定のマスの5段分の高さを要求していくのですから。Fig. 1で示される断面でも見覚えがあるかもしれませんが、Round 5では5Iの他のポリキューブとして1I〜4Iまでの各種の棒に加え、4T, 4O, 5Lが登場します。1I〜4Iや4Oについてはまだしも、4Tと5Lという内容は中々えげつないラインナップと言えます。これらの置き場所を上手く分散させるには、平面的な思考だけでは物足りないといえるでしょう。全ての長いポリキューブを熟慮せずに平積みにしてしまうと図の通り5Iをコーナーに早速立てなければならない状況に陥ります。

 では、5Iの受けを殺さないような積み方はどうするかというと、2つ以上のポリキューブの辺を合計5になるようにすぐに頭の中で計算することです。よく多用されるのは、Fig. 2に挙げる4O+長さ3のポリキューブのパターンや、長さ4のポリキューブに更に棒を組み合わせるFig. 3の様なやり方が考えられます。5×5のラウンドは列や行ごとの充填具合を判断する、今までのラウンドとは異なる趣のゲームとなるので、基本的なキューブ長の足し算は計算せずに出るようにしておく必要があります。そのためにこそ、全24個のポリキューブについて、その形状、ひいては何使いの形を持っているのか、という学習が重要になります。勿論、Round 20以上から始めるエキスパートプレイヤーにとっては、これすらもただの基礎知識でしかありません。
 そして、もっと重要なことは、この5Iを待つ体勢を作ることは出来ても、「維持」していくのはその何倍も難しいということです。例えば、5I待ちの行が1つ残っている状態で4Iを引いた場合のフォローをどうするべきか? Fig. 4の様なケースを考えてみましょう。([5,1]-[5,5])の5行目=一番手前の横の並びを5I用に確保することを優先する場合、4Iは3コマ目のような配置がましということになります。しかし、その後5Lを2回引いた場合、1回はまだ受け口があるとして、最終形をどちらに受けるべきでしょうか? 7コマ目は長さ4の空間が残りますが、5Iを2連続ドローするとたちまち厳しくなります。8コマ目は5I受けが縦に走って出来ていますが、そこで5Iを2回引くと、一番右端の列にアクセス不能に近い高さ4の壁が出来上がるのが最大の難点です。このように、一時的に受けられるポリキューブが狭くなるということがブロックアウトでは容易に発生します。何よりも、ブロックアウトでは最後のノルマを消し切るまで戦いは終わることはありません。残り1〜2フェイスからレベル5に突入した状態で非情なドローを引いたときに、5Iの様な極端な充填しか出来ないポリキューブは、選択できる可能性が少なく、生存の芽を摘む要因となります。1回の落下が、その後に及ぼす影響を考えなければ安定して勝つことは出来ない、そこがこのゲーム最大の難しさであり、面白さなのです。

Fig. 1
Fig. 2
Fig. 3
Fig. 4

一際厳しくなった天井蹴りにより、緑の層が見えたときにゲームは終わる

 回転を伴う配置の対策についても言及する必要があります。非常に大きな可動範囲を持つ5Iは、キューブ蹴りが発生しやすい危険なブロックです。長いものをみだりに振り回しては危ないわけです。その回転の原理については5面台を危機無く渡り歩く上で知っておく必要があります。
 一番分かりやすく、一番致命的なケースがFig. 5aです。これだけは絶対に覚えていて下さい! この中央に配置された([3,1,3]-[3,5,3])のブロックが意味するところは、中央が3列以上で埋まってしまうと、もうBボタンによって5Iを立てることは不可能となります。両端の地形に5Iを受ける場所がなければ、それだけで層を1つ失うのです。何故そうなるかというと、天井蹴りが原因ということもお分かりになるでしょう。天井蹴りによって5Iは即立てたときに5〜9段目を占めることになりますが、恰も天井によって2段分蹴られ、頂点がピットの天井である7段目であるかのような計算を受けます。そうすると、床にある構成キューブは3段目、則ち緑の層です。そして、ここを蹴ったと判定されるわけですが、必ず左右の中心にしか5Iが立たない性質から、Fig. 5bのケースなら回避可能なのです。3Iの臨死階段落としの説明でも紹介した通り、天井蹴りの補正はあくまで回転の正否にしか影響せず、その後は天井の高さを超えた移動があっても合法手となるため、そこから([1,1])に5Iをねじ込めるわけです。
 「中央が回転基準となる」というケースは、Cでの回転(A0とA1の変換)も同じです。A0からA1へ移行するときは、棒の位置が手前にあろうと奥にあろうと、Cで回転すれば左右の中心の列を占めることとなり、逆に今度は右に寄せようと左に寄せようと、次にCを押したときには必ず中央の行へ移行します(Fig. 6)。その場合、中央の行と列については、中心の[(3,3)]を緑にさえしなければいいという訳にはいかなくなります。それがFig. 7の場合で、これは90°回転させたフィールドでも起こりうるケースです。これは自由落下で考え込んだりしてしまうと、回転が遅れ着手が間に合わなくなります。「やられる前にやれ」「考えるよりも先に回転をせよ」というのが、いかに重要なのかが伺えると思います。特に、90°反転させた場合、つまり([1,3])または([5,3])の高さが非常に高い場合、手前から奥に伸びたA1状態からはA0への回転も出来なくなり、更にはL0へはA0を経ないと回転できないため、一切の回転が封じられてしまいます。むやみなCボタンでの回転を実施することは、Bボタンで立てることよりも危険な場合があるというわけです。この状態を回避する為には、「高さの出る置き方はなるべく四隅に置いて、真ん中は避ける」ということが動かし方の原則になってきます。
 Fig. 6を見れば分かる通り、Cの回転入れのケースは、中央の行または列にトンネルのような形が出来ていなければならず、5面台の定石にあからさまに反していますし、5穴を用意できなければ回転入れすらチャンスがありません。覚える必要が無いとはまさにこのことです、雑念を捨てましょう。

Fig. 5a
Fig. 5b
Fig. 6
Fig. 7

夢追い人達の目指す果て、それがクインティプル(5面同時消し)

 このゲームに於ける最高得点……では残念ながらありません*1が、この長さ5を持つポリキューブのみが狙えるいわばE難度クラスの技、それがクインティプル(5面同時消し)です。しかし、その成立には非常に運が絡み、またRound 5以外にはまず実践不可能であろうと目され、最も現実味を帯びるそこですらも成功率は1%以下ではないかと思われる技です。その理由は多岐に亘ります。まず、Fig. 8で挙げられている図ですが、これは5×5×5のリーチ目までの配置を行ってから、全24種類のポリキューブを受けようとする場合、2コマ目の図になるのですが、そのとき許容できる置き場所は僅かに32マス。これはペンタキューブ6個しか許容できない狭い隙間の上に、立体のポリキューブは6段目に掛かることすら許されないものがあるのです(5H以外の立体ペンタキューブは、6段目にかかるマスが4カ所あり、致死率が高くなります)。一方、3コマ目は24種ではなくRound 5で出てくるポリキューブのみに絞った場合です。これなら、許容場所が7マス増えて39マスとなりますし、立体のポリキューブが出てきませんから、6段目までフルに待つことが可能です。よって、現実的にRound 5以外では狙わないことが正しい訳です(Round 15も立体はありませんが、5T, 5J, 5Xは高さ2で避けるには余りに難しいキューブです)。そして、正否自体は完全に5I自体の出現率に依るのですが、なんと一番安全なはずのRound 5で冒頭も述べたように8%……いかに絶望的な数字か分かります。しかし、何よりもこの技の最大の難点は、その難易度に対して見合わない点数です。計算すれば最下段でのクインティプルは3,750点であり、いかに実入りのない点数かはすぐにやってみれば分かるでしょう。
 それでも挑戦するというのは、点数以上の価値を認めているということなのでしょう。今回は特別に、2点ほど動画からクインティプルの成功例を譜面化してみます。Fig. 9aは39手(リーチ38手からの一発)での達成となり、FIg. 9bは40手(リーチまで34手)で成し遂げています*3。いずれの場合にも共通するのは、ポリキューブの出現率偏りに大変な注意が必要なこと(どちらも4Oが連続で出てくる場面がありますが、3Iの18%、4Iの17%に次いで、4Oは16%と第3位の出現率です)が挙げられます。
 まず9aの特徴ですが、非常に体積を占有するキューブをいきなり捨てに掛かっている非常に思い切った手が幾つか出てきます。これは、ゲームオーバーにならないような領域(Fig. 8の3コマ目に該当)をしっかり覚えていなければ、誤って死んでしまうことがあり非常に難しい危険な賭けです。また、Fig. 9aの46コマ目の5Lは右下角が高くなるような回避で上手くやり過ごしていますが、56コマ目の5Lは危険な一手です。何故ならこの地形のまま次に5Iを引いてしまうと、下の段に横に寝かせるか、([2,1]-[3,1])のどちらかに立てるしかないのですが、奥へ逃がすのは大変難しく*4、いずれも招くのは非常に難しい状況です。また、この([5,2,7])が埋まっているせいで、67〜68コマ目の4Iは左に迂回して回さなければならないことを忘れないで下さい。動画ではそこを丁寧に捌いています。最後に難しかったのは74コマ目の4Tでした。動画では置く場所が見当たらず逡巡する様が分かりますが、これをぎりぎりこの形で定め、1I→5Iと5面完成の後に一発ツモでクインティプル達成というのは見事です。
 次に9bでは、5Lなどを使ってやはり中央の穴を露骨に確保しています。しかし、23〜32コマ目にかけての5連続4O、47〜54コマ目の4連続4Oなど極悪なドローが続いている辺りで、地形が揃っていないと難しくなる地点をぐっと堪えるのは難しいため、クインティプルを諦めざるを得ないのが現実です。この動画では上手く全てのポリキューブの受け口を作りながらの進行が功を奏し、34手目(図69コマ目)で余りは僅か2マスと秀麗な配置であり、あとは5Iを引くのみとなっています。しかし、そこから待たされること実に6手。8%の5Iを5手連続で引かない確率は(0.92)^5=65.9%で、更に次の1手もやはり連続で引かない確率が60.6%と、半分以上というとても高い確率です。39マスしか余裕のある場所がないというのが、クインティプルの絶対的な障害となることがお分かりでしょう。決死の思いでこの形を組み上げても、結局3I〜4Iで妥協するか、死を選ぶしかないというケースがよく出てきますので、このような幸運な事例はあくまでも幸運と受け取らなければならないのです。

Fig. 8*2
Fig. 9a
Fig. 9b

クインティプル動画から学ぶ、5Iおよび5×5×7の最善定石

 闇雲に高得点を狙うというだけの意味合いではなく、生存目的での5Iの捌き方を覚えたいという方には、定石通りしっかりキューブを積むことが出来るようになるスキルが重要であるため、やはり上記の手順のような積み方を目指して貰いたいものです(特にFig. 9bであれば理想的である)。そのためには、何をしなければならないのでしょう?
 まずは、前節までに紹介した寝かせる5Iの作り方、これは基本です。しかし、それだけではいずれ4Iや3Iなどの中途半端な長さのブロックが道をふさいだり、更には5L, 5Tなど厄介なフラットキューブ、そして5Qや5X, 5Kなど盤面破壊に定評のあるキューブの避け方も考えなければなりません。

 ひとつシミュレーションをしてみようと思います。Fig. 10の状況から5J→4I→5Iという順序でポリキューブが降る場合、どう対処するのが良いでしょうか? これには多くのソリューションがあるため紹介は少なくしますが、多くの方は4手目から4Iを青の縦4の上、5Iは紫の左の列の上に乗せるように手なりに置いていく発想になるでしょう。しかし、中級以上のプレイヤーが深読みするならば、左上角の十字(5X)置き場が魅力的なので、3コマ目のような分断を敢えて作り、奥の行の幅2の穴を棒で整地していく気配もあり得ます。ただし、どんなときでも、座標が中央の行・列のいずれかに5段もの高さを置いてしまうのが危険なのは、お話し済みです。特にフェイス数の残りが少なくなってくると、Fig. 11に見られるような「摩天楼構造」「高層ビル建築」などと半ば揶揄される形で呼ばれる面倒な地形になりがちです。この構造は、4Iや5Iなどで高さがせり上がった層が不連続に現れている局面を指し、この状態が続くと、棒以外の平置き面積の大きなポリキューブが受けにくくなるという大きな欠点を持ちます。それでもフェイスを消すことを優先しなければならない事情から、紫以上の層で勝負を賭けるという方法も多く取られます(1/7の高さを取られることがどれだけ致命的なことかは、想像だに難くないでしょう)。
 更に、徒らにコーナーへ立てて高くするよりも、スライド入れでもいいので低く取りたいというシチュエーションは多く存在しますから、どのスライドが一番良いかを見越しておく必要があります。Fig. 12の例を挙げてみましたが、どう置きますか? 右下のコーナーで立ててしまうのは一寸良くない、ということで、4I, 5J, 5Yをダイレクトにスライドできるこの形を敢えて取るというのが理想的でしょう。仮に長さ4のものが来なかったとしても、和が4になるような埋め方なら何でも良いわけです。もっといえば、5QやCS/CZを3L使いして2枚で補填するというのも十分いいやり方です。少し難しくしてFig. 13はどうでしょう? この場合、一番手前の5行目に置きたくなるところですが、これは縦にやった方が、スライド隙間が1マスのためすぐに補填できる上、補填可能なポリキューブの候補も周りの隙間さえ有ればかなり多いので、序盤はこういうスライドを考えていこう、という作戦が成り立ちます。これを使いこなせれば、もう中級者としても上位に位置するレベルでしょう。初心者の方も、目先の形式の綺麗さに囚われそうな所をぐっと耐えて、素晴らしい技のエッセンスを体得して下さい。

Fig. 10
Fig. 11
Fig. 12
Fig. 13

総括

 5Iは末尾5面台のみに出現する、ほかとは一線を画したペンタキューブです。その長さと極端な占有箇所により、寝かせて受ける場所が必須となる邪魔なポリキューブということになります。点数的には実入りがあまりないクインティプルですが、このポリキューブのみが唯一それを狙うことが出来るという意味では、ある意味高次周クリアよりも難しいのではないかと思われます。その積み方は基本的に中央を開けてほかを満遍なく積む方法ですが、それが5面台自体の最適な生還方法ともなります。
 必ず死守しなければならないのは3行目・3列目、つまりピットを縦横に走っている中央のマスを通る線です。この高さを3以上にすれば、非常に展開は苦しくなり、特に3列目が全て緑になると天井蹴りの補正により立てることが不可能になります。立てるというのはある種の最終手段じみたところがありますが、5Iをどの状態なら運搬可能かを見極め、配置をしていくようにしなければ、Round 25以上の面では勝利が難しく思えるでしょう。まずは一番長いブロックの可動域を考えながら戦えば、それ以上の用心に越したことはありません。

[*1]当然のことながら、ブロック・アウトを成立させれば、このゲームで1回の動作で得られる最高点(37,500pts.)である。しかし、これを実機で成功させる動画があれば見てみたいものである。
[*2]Fig. 8の2コマ目の画像で、[(3,1,7)]に初期位置が来るポリキューブは無いものの、[(3,1,6)]は空いていることに注意(ここを塞ぐと、5Fの初期位置に重なり死亡する)。
[*3]Fig. 9aはR.Bさんによって録画されており(http://www.nicovideo.jp/watch/sm18274108)、Fig. 9bは筆者の動画から引いたものである(http://www.youtube.com/watch?v=rniGwqrcvFk, 21:00から23:40まで)。
[*4]まず、([5,2,7])の存在によりレバー上入力は不可能。そうするとBで回転するしか選択肢が無くなるが、このとき5Iは9〜5段目までの位置を占めており、この状態でもやはりレバーを上に入れることが出来ない。そうすると、黄色の面がある左入力からの迂回を試みるしかない。Level 5などではLevel 1よりも固着までの猶予フレームが若干あるとはいえ([src:SAL B4.1]))、いったん躊躇うと死が待つ。


目次: 1I | 2I | 3I | 3L | 4I | 4L | 4T | 4O | 4S | 4Y | CS | CZ | 5I | 5J | 5Y | 5X | 5T | 5L | 5C | 5P | 5Q | 5K | 5H | 5F
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