4Iの最短回転経路 | |||||||
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A0 | neutral | ||||||
L0 | B | A1 | C | ||||
A2 | BB, CC | ||||||
R0 | BBB, CCB | A3 | BBC, CCC |
いよいよテトリスでも馴染みのあるテトラキューブ(tetracube, 4個の単位ブロックで構成されたポリキューブのこと)の紹介です。なお、平面で正方形4つ組みのものはテトロミノ(tetromino)と呼ばれます*1が、それを立体化したものは、空間上で回転できるのでL/JとS/Zが同じ形となり、合計で5つ存在することになります。テトロミノに対応するテトラキューブのように、置いた時に高さが1になる平べったいポリキューブのことを「フラットな」(flat)ポリキューブと呼び、他方4Yなどに代表される必ず縦・横・高さが2以上ある立体(所謂、「立体的な立体」)を「フラットでない」(non-flat)ポリキューブと呼んで区別します。この、フラットなテトラキューブの代表的な存在が4Iで、棒形の中でもかなりの重量級の位置付けになっています。
まず、その形の特徴は明確です。何より、長さが4あるということはそれだけで特徴的です。ブロックアウトでは、当然と言っては当然ですが「ピットの縦または横の、短い方の長さよりも長い部分を持つポリキューブは出現できない」というルールがあります。考えてみれば、回転で壁に支えるようなものが出てはゲームにならないので、分かることです。結果としてこのポリキューブは末尾1, 5, 7のラウンド以外には出現できないのです。最大長さが3のキューブは、ボーナスステージと末尾6のラウンドのみ出現しませんが、長さ4のキューブは3のキューブよりも、出現可能性が1/3位になるという単純化した考え方で結構です。そして、長さが4あるということは、隙間なく置ける可能性がかなり減ります。特に5面台は平置きで5Iや他の長さ4のペンタキューブである5J, 5Yの置き場を確保しながら詰んでいかなければ、簡単に高低差がありすぎる危険な地形になってしまいます(特に5×5については5Iの項を見て下さい)。
A面の棒が寝ている形について考えたいと思います。長さ4というのは置くのに実は相当苦慮するブロックです。端から高さを揃えていくような置き方が求められますが、現状開いている隙間が全て3以下となってしまうと立てて置かざるを得ないため、更に移動スペースが限られる、という悪循環に陥りがちです。極端な例がFig. 1ですが、このような例は「窪地を2つに分けて作ってはいけない」という好例と言えます。
そのため、4Iが入るようなピットにおいては、常に長い穴を横たえて置けるような地形を構成する必要があります。例えばRound 27を想定したFig. 2をご覧下さい。基本的な定石である2つの考え方:「地形はなだらかにし、急な高度差を作らない」「フェイスを消すための窪地を2箇所以上に分断させない」というのを考えると、上手く捌くにはどうしたら良いかという考えが身についてきます。この例では、画面上部の2段目の地形も整理することで、長さ4の置き場を待避できるバリエーションを増やすことで、4I待ちが最下段で崩れてしまっても大丈夫、という細やかな配慮をしています。その中で、4Iを置こうとする10コマ目を、11コマ目で終える(4Iは[(3,2)-(3,5)]に位置する)か、12コマ目にする(同、[(4,2)-(4,5)])かというのは実はラウンドごとの戦略を考えなければなりません。Round 27のように登場するポリキューブの種類が増えてきている場合はレバー入力において安心して手順を運べるようにしたいので、操作ブロックが見えた後でもレバー溜めで動かして叩き込みやすい、穴の位置が分断されづらいという理由で11コマ目に置くプレイヤーも多いでしょう。しかし、12コマ目の手順も悪いわけではありません。真ん中の列に穴を開けておく利点は次の2つがあります。
次に重要なのは5×5×7の場合です。Round 5から長いポリキューブに対する対策を立てねばならないというのは大変なことです。特に、5Iの置き場所を常に確保しておかなければならない上に、4Iも危険にならないように制御するというのは一種の綱渡りのような大変さです(Fig. 3)。ラウンドが進んでRound 15ともなると、今度は5J、Round 25では更に5Yという長いキューブが襲来してくるため、横の隙間の確保は一層厳しさを見せます。Round 5で異なる長さのポリキューブを整理するテクニックを覚えなければいけないでしょう。また、末尾5のラウンドでは、周りの地形の高さが4まで達してくると危険信号です。Fig. 4のようなモデルを考えた時ですが、4Iは高さ4の地形で天井蹴りに引っかかるため回せなくなります(5Iの場合は高さ3で天井蹴りに引っかかる)。一応長さ4ということで、左右両端以外の15マスのうちどれかの高さが緑なら回すことが可能ですが、そのような状況を招くことは余りにも無配慮というか、危険なオペレーションです。長さ4の確保位置が緑まで達したら置き場所不足を警戒するところなので、安全なエッジ、コーナーが開いていたら最優先でコーナーに立てて入れることになります。1つのポリキューブの運用を誤ると即死するブロックアウトで安定した成績を残すには、なんと言っても引き際が肝心です。
Fig. 1 |
Fig. 2 |
Fig. 3 |
Fig. 4 |
さて、4Iを立てる形であるL0とR0について遷移の方式は2Iと全く同じで、回転軸が左に寄っているため、L0状態ではR0状態より1段低い位置に立ち、寝かせてL0→A2(+2段)とすると、R0→A0(+1段)とした時より棒が1段高い所に寝ます。ここではBによる回転階段落としを実施して、その性質を比べてみましょう。Fig. 5aがL0→A2、Fig. 5bがR0→A0のケースです。 ここでもやはり、2Iと同様にL0の方が階段落としに向いているという結論が導き出せます。まず1aの方では、左側に[(2,1)]に棒が立ちます(青い層がマーカーになっています)。まずは即落下(ここでは7段落下のため28点入る)1段落として階段落としを実施します。次に、7コマ目のBですが、実はこのとき1段浮いた状態の高さになるので、8コマ目のような落下となり、ここでも100点が入ります。当然手前に動かして地表への階段落としもある(9~10コマ目)ので、合計得点は328点です。このように4Iはたった1つの段差だけで300点のドロップポイントを狙うことが出来ますが、5コマ目でBが高い所で寝る性質を知らないで[(2,2)]へ持ってきてからBを押すと、100点損してしまいます。
Fig. 5bはどうでしょう? 同じようにすると、今度は[(3,1)]に棒が立ちました。この対称性があるので、棒を立てた時にL0なのかR0なのかを確認することが出来ます。同じように地表へ1段落とし、Bを押してみます。地表へ落とす際の得点ですが、2I同様にR0は1段高い所に位置するため、(自然落下が1マス起こる前に速やかに操作すると)得られる得点は4点高くなり、32点となります。しかし、7コマ目のB回転では、1段目の層に直接乗るような形で回転が行われるので、操作中の4Iでは階段落としが発生しません。これに気づかなければ、当然固定までの時間にリセットが掛からなくなるので、結果的には回転後に固着してしまいます。階段落としは地表への1回しか発生しないため132点が得点です。そのことに気づいてより安全に操作した例(固定する前に上下レバーの移動で地面に落とす)を9コマ目から実戦していますが、この場合100点余計に増えるだけなので、結局232点、Fig. 5aの操作に階段落とし1回分負けてしまいます。
このことから、4IはまずBを1回押して立てる形から入るのが得点上重要になってきます。よくあるパターンとしては、5面台で4Iを2回引いてきた時に、1本目を横に平置きした後に2本目を横スライドで階段落としし、Bを押して1段階段落としてから1本目の4Iに重ねるように横移動するパターンで、安全に長さ4を確保しつつ点を底上げできます。
しかし、BBBCまたはCCBCとボタンを押してR0状態を出す優位性はあります。それは、全くレバー操作をせずに4Iの位置を1段ずらせるという点であり、レベル5の場合にそれが役に立ちます。実際に筆者が実践したのがRound 7, Level 5の状況でクアドラプルの全消しを聴牌したFig. 6の状態です*2。この状態では、気付いた時には既にBによって回転が不可能な状態まで自然落下の速度が上がっており、逆に開幕ぶっ放しでB回転が出来たとしても、レバー入力を誤った場合支えて死ぬ可能性が高く、その方が却って危険となります。これを打破する為にはCCと180度水平に回した後で軸の位置を[(2,3)]から[(3,3)]に振り替え、Bで挿入する以外にありませんでした。回転法則をマスターしていれば、この時の穴は出現時の軸の位置と同じ左から2番目に作っておくべきでしたが、ネクストの無いゲームではそもそも論となるだけでなく、プレイ中に穴の位置は刻々と入れ替わるのがブロックアウトの常です。偶数長さの棒はこのようにCC(もしくはBB)で1マス右へ回転軸をずらせるということを覚えておくことで、短いブロックが引けないとしても死にかけの局面でぎりぎりの1フェイスをもぎ取れることがあるので、限られた瞬間のために知識に裏付けられた反射神経が、超上級者への扉を開く一歩になります。
さて、R0状態においては、L0よりも高さが1段高くなるため、高さが天井を2段突き抜けた状態になりますので、ゲームオーバーの条件である天井突き破りの仕様を確認することが出来ます。Fig. 7のようにRound 5で高さが5,4ある階段を準備します。その状態で4Iを引き、BBBまたはCCBで自由落下が入る前に4IをR0状態にします(最下段の高さが6になり、5段目にぎりぎり乗せることが出来る)。では、そこで1段ずつ臨死階段落としができるのでしょうか?、という問題ですが、その答えは、高さが4の段に置かれた瞬間にゲームオーバーになり、実際のゲーム画面ではワイヤーフレームが赤色のままゲームが終了します。このようなケースでは得点も入りません(則ち、落下点の加算よりもゲームオーバー判定の方が優先的に処理されているわけです)。また、原理的に高さ5から4のマスへと移動させると、階段落としの初動によってとなりのマスで一度接地判定が出てしまうため、飛び越しによって緑の段まで移動し、臨死を実行することは不可能です。R0で無理矢理高い所を狙って階段落としをするシチュエーションは無く、また自由落下の方が先に入る可能性が高いため、実際のプレイでは気にする事象ではないでしょうが、内部上は設置後に死亡判定を行い、それが成功してから得点を計算するということになっています。
Fig. 5a |
Fig. 5b |
Fig. 6 |
Fig. 7 |
4Iはクアドラプルにアクセスできるポリキューブとしては、5Iと並んで初登場になります。4段を同時に消すことのできるポリキューブは全24種類のうち僅かに3種類だけです(4I, 5I, 5J。更にはテクノス版で省かれた17種のペンタキューブで、4段以上を同時に消せるものは存在しない)。そして、現実的にクアドラプルを狙うとすれば、4I(および4Iで決められる箇所での5I)のみに限られます。まず5Jについては、4Lと違い1手でL0を向けて4段消しの刺し込み型となりますが、すっぽりと入る形は待ちが狭いのです(5Tも駄目、5Lも駄目、5Fも駄目、5Yでは1段足りない)。Round 15以降の末尾5面台で狙うのは勿論の事、末尾7面台でも2,000点を狙う待ちとしては危険です。この2つのステージは高さが8以下であり、回転の際に差し込み位置を間違え、うっかり高さ8の所に土台をチョークさせようものなら、待つのは確実な死です(4Lを3~5列目で消すのも結構リスクが高いのですが、得られる得点は1,800点となり、最下段の4段消しとそれほど変わりありません)。そして、1面台で5Jが登場するのはRound 41からです(同項を参照)。
逆に、4Iが安全に4段消しに運用できるのは末尾1面台です。周の最初のラウンドであることから落下速度も遅く([src:SAL B7])、最低でも高さ9段が保障されているので、4段消しのために地形の半分以上を持っていかれるというところまではいかないのが追い風になっています。
Fig. 8のように左から2列目で待つと、ダイレクトインで終了します。勿論、階段落としを複合させるのはスコアラーとしてぜひやるべきでしょう。そのほかのブロックは、特に3Iや4Lを置く場所が欲しいのと、4Y/CS/CZといった鉤型を含んだブロックを捨てる場所も必要なので、なるべく広い場所を空けて待っておけるようにしましょう。Round 21は得点機が少なく退屈なラウンドの1つではありますが、4Iによる2,000点を狙うことができる最後のラウンドといっても過言ではありません(Round 31は5X, 5Yの出現が始まる上、4Iの出現率も若干下がるため、やや現実的ではない。但し、Round 21, 31共にクアドラプル全消しの達成報告がありますので、不可能ではないことは示されています)。また、Round 11などでは、場合によって1段底上げをして2,800点に得点をジャンプアップさせる賭けもあります(Fig. 9)。1段の差で800点というのはかなり大きいものです。階段落としのスコアが半分近くを占めるこのゲームにおいても、1段分積み上げた階段落とし点が800点にも上るというのは序盤のうちだけですから、高さに余裕がありトリプル(最下段900点で、底上げ1段毎に450点)以上の大役が安定して狙えるステージならば階段落としも重ねつつ消去点を積極的に狙った方が圧倒的に良くなります。
理論的には、Round 11(4×4×10)でも4Iが12回に1回は出てくるという統計結果のため、そこで最高点を狙い、6,000点という最大消去得点も成立しえます(5段消しは底上げが1段しか出来ず最大5,000点止まりである。詳しくはスコアシステム参照)が、現実的には2段底上げの3,600点ですら、出来たら拍手を送りたい難易度です。ネタプレイならまだしも、それだけのためにゲームオーバーになるリスクを極限まで押し上げることはしないでしょう。
Fig. 8 |
Fig. 9 |
4Iは基本的なテトラキューブでありながら、かなりギャンブル要素の高いクアドラプルを狙うことができるという意味では重たいポリキューブの1つと言えます。また、その長さによって、出てくるラウンドが大幅に制限される他、その長さが邪魔をするので配置も重要になってきます。縦に寝せるか、横に寝せるか、また鉛直方向に立てるか、という選択に適切な解答を出すには、ぶれのないリソース管理が必須となり、大胆な得点狙いが可能な場面を除いては非常に慎重な捌き方が求められます。特に5Iが同時に出現できる場合は、それを見越した地形作りを心がける必要があります。
[*1] 正方形の組み合わせである「ミノ」の呼称は幾つかある。元は"domino"(ドミノ、賽の目のついた正方形の2枚の板をくっつけた駒)を、"d(i)-"が2を意味するギリシア語接頭辞であるかのようにみなし、残りの"-omino"を、隣接した正方形の組み合わせの形という定義に再解釈した。そのミノ一般を指して"polyomino"と呼んだSolomon Wolf Golomb[ja:wikipedia]に拠れば、彼がこの造語を作った1954年("Checker Boards and Polyominos", American Mathematical Monthly Vol. 61)よりも遙か前、1907年にはポリオミノがパズルの題材として既に使われていたという。さて、4個組であるテトロミノの場合は"tetromino"のほか"tetramino", "tetrimino"の異綴がある。"tetra-"と綴るのはやはり接頭辞のラテン語数詞の方が強いと見倣したのだろうが、"pentamino"はよいとしても、"dimino", "trimino"という語形成が滅多に使用されない(誤りとする話者も多いであろう)ため、"-omino"という接尾辞の方が一般的であると考えてよいだろう。"tetrimino"は、皆さんご存じの通り、テトリスの用語として使われており、専ら「コマーシャルな」用語であるため、テトリス以外の分野で用いることは余りされない。
[*2} 動画での解説は、筆者によるアップロード動画:http://www.nicovideo.jp/watch/sm23209445にある。