2Iの最短回転経路 | |||||||
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A0 | neutral | ||||||
L0 | B | A1 | C | ||||
A2 | BB, CC | ||||||
R0 | BBB, CCB | A3 | BBC, CCC |
唯一のダイキューブ(dicube, 2個の単位ブロックで構成されたポリキューブのこと)である2Iは、やはり機動力の高いブロックと言える初心者向けのブロックですが、最初の出現は意外と遅くRound 4となります。実は、2IはRound 1で登場する3Iよりも複雑な回転法則を持っています。3Iが3通りの形態しか持たないのに対し、2IにはA0~A3, L0, R0の6通りが存在するのです。
上の回転法則図で言うL0状態(操作はB)とR0状態(同、BBB)との違いは一体なんでしょう? 答えは回転軸とそうでないブロックの位置関係の違いなのですが、よく見るとR0の方が高い位置にワイヤーフレーム描画されているのがお分かりになるでしょうか。A0→L0に遷移すると、回転軸は左側のキューブにあるため、床側に棒が伸びる回転をします。一方A2→R0と遷移する場合は回転軸が右側のキューブとなり、天井側に棒が伸びます。この挙動の違いについて、下に図を用意しています。
まず、Fig. 1を見てみましょう。1Iの項で使用したのと同じ図面を使っています。1段目の層には丁度2Iが埋められそうな穴が開いていますが、果たして入れられるでしょうか? まず、Fig. 1aのように、L0状態で回転入れを試みます。すると、A2状態に移行する回転は、2段目の層に接触することが分かります(Fig. 1aの7手目)。そうすると、回転は失敗し、そのまま突き刺さった状態となります。一方、Fig. 1bを見ると、今度はR0状態で回転入れを試みています*1。実際に操作すると、今度は2Iが伏せる形になり1段目を埋めることに成功しました。このように、回転入れの正否がどのように棒を鉛直方向にしたかで変わってしまうので、2Iに対して行ったボタン操作を覚えている必要がありますので、注意して下さい。
しかし、よく思い出してみて下さい。実は得点法則上はFig. 1aの方が1bよりもお得であることに気がつきませんか?(1aは2段目シングルなので100点、1bは1段目シングルなので50点) 実は回転入れでねじ込んで消した方が、得点が低いという矛盾を孕んでいます。だからといってこのテクニックを覚えておくのが不要ということにはなりません。1段目の他の所に穴が開いていたり、そもそもねじ込まなければならない穴が2×1サイズではなく3×1サイズであれば(Fig. 2)、ダブル消去にリーチとなる回転入れを使用しない理由がありません。上手く使い分けましょう。
Fig. 1a |
Fig. 1b |
Fig. 2 |
Fig 1.では、回転入れが可能な状況でしたが、実は穴の位置が変わると回転入れが不可能になる場合があります。それはどんな時か? ――アーケード版のブロックアウトは、Y軸の回転、Z軸の回転ともに、1方向へしか回転できない為、本来と逆方向に回転する必要がある穴には全く対処出来なくなります。そのような回転入れの失敗例として、Fig. 3をご覧下さい。Fig. 3では2段目の層に蓋がされている時点で、R0からの回転入れ(伏せ回転)しか埋める方法がないということを確かめて下さい(Fig. 1の時と同じように、L0状態からのB回転は、開店後の位置が紫の層と衝突してしまいます)。しかし、Fig. 3の7コマ目を見ると、R0→A0に遷移する時の回転軸から、2Iは右側に寝てしまい、穴の方向と合致しません。
しかし、この方向での回転入れが成功する場合も存在します。それがFig. 4です。Fig. 4では、R0→A0での回転時に2Iが衝突するのですが、それは地形ブロックや床ではなく、四辺(右側)の壁です。そうすると、側壁は壁蹴りが有効であるため、中央寄りということで左側に棒が寝ることになります(ポリキューブの正しい回転形がそのまま左に1マスずれる)。このことから、壁蹴りは特殊な回転入れの場合にまで役立つ可能性を秘めているわけです。
更に回転の挙動を見るため、今度はA1, A3の絡む回転を見ていきましょう。Fig. 5では回転が可能な溝、Fig. 6では回転が不可能な溝をそれぞれ表しています。左右反転した形には嵌め込みに失敗するため、どちらの形が安全かを見極める必要があります。大原則はCボタンで「軸を中心に反時計回りの回転」です。縦の形から始めた場合は割愛しますが、回転図からイメージを掴むことは出来るでしょう。実践上には3×3の底面積など小さいピットで戦う時に訓練が役に立つかもしれません。
Fig. 3 |
Fig. 4 |
Fig. 5 |
Fig. 6 |
回転の項でちらりと触れましたが、L0→A2の回転は2I全体の高さが2段目に位置し、R0→A0の回転は1段目に位置することになります。ということは、周囲に地形の無い状況で立てた2Iを回転させた時の挙動も違ってきます。結論から言えば、L0→A2は接地状態から回転すると地面から1段浮いた位置にあるため、階段落としの100点が入るのですが、R0→A0は地表の高さと同じになってしまいますので100点が入りません。実際の動きを下図に纏めています(Round 24など3×3×8のピットを想定)。Fig. 7はL0→A2で落下点12点+100点加算、Fig. 8はR0→A0で落下点のみ14点となります(その場でR0にすれば棒が上を向いて7段分の高さになるので、2点だけ高くなります)。
Fig. 7 |
Fig. 8 |
一旦回転入れの話からは離れて、2Iの形状自体に注目すると、1Iと同様にユーティリティプレイヤーとしての活躍が大いに期待されます。1マスまたは2マスの穴(しかも1Iより消去点が高い!)を自由に埋めることができ、しかも回転による形の制約はあるものの、運び易さも及ばないのは1Iだけと見事なものです。しかし、1Iですら選択に迷う時があるのですから、2Iもやはりどこに置くべきかが悩ましい場合もあります(特に1Iと違いダブルを狙えるという点は大きい)。埋めたい場所がぴったり埋まるポリキューブが来たら速攻で補填をするのが大事です。ここに、2つの例題としてFig. 9, Fig. 10を挙げてみます。
Fig. 9aを見てみましょう。この場合は丁度寝かせておく2穴が奥1行目[(3,1)-(4,1)]に存在するのでそこに置きます。何故手前高さ2の穴[(4,5)]から咎めに行かないかというと、この[(4,5)]付近の高さが問題なく5Iを運べる点から、差し込みは後回しでいいと判断できます。
しかし、似たような地形ですがFig. 9bのような妨害が発生するとそうも行きません。この図は例えば5Jなどを引いたことによって穴埋めをせざるを得ず、3列目が高くなってしまった場合のケースがあり得ますが、5Iを見た直後に動かさないと安全に運べないため、4Iや5Iなど長い棒、それに準ずる5J, 5Yの長辺には[(3,1)]か[(4,1)]への配置が正着となります。特に[(3,5)]などが高くそびえている場合は、上に棒を捨ててやり過ごすしかありません。捨てる場所が無くなればコーナーを犠牲にする定石から[(5,5)]しか置く場所がなく、更にポリキューブの配運が悪ければ、詰みを待つのみとなります。
総合的に地形を判断し、埋めるのが難しい箇所(本命と異なるキューブが来た場合に対処可能な場所)を判断していく必要があります。特に、Fig. 9a/bに共通する地形の問題として、5Xや5Kが来た場合に置き場がない事*2、CS, CZ, 4Y, 5F, 5Qなどの鉤形(=3Lを含んでいる形)がすっぽり入る待ちを残した方が良いことを考えれば、そこを2Iで態々埋めるのは勿体ないと思われます。一つの攻め方の例ですが、参考になればと思います。
次に、5×5以外の例えばRound 38などを見てみましょう。原則として長いぶっ刺し要因の出易い5面台、7面台を除き、基本的に深さが2以上の俗に言う2穴は作ってはいけない禁じ手とされます。それは単純に2Iや3Iが引けないという統計上の問題だけではなく、更に他の2穴に対応できるブロックの出現率まで考えると長い穴を待つ手が不利なことが多い為です。例えば、Fig. 10では2I、3Iの単純な棒だけでなく5L, 5Tさらには5Fのように2穴聴牌を作れるものを差し込める状態を示しています(2コマ目から順に2I, そしてペンタキューブの5L, 5T, 5F)。しかし、2穴の周りが常にこのような綺麗に待てる形とは限りません。ましてや2穴を待ち続けるということは、妥協をせずに他のゴミ捨て場を埋める形にしてしまう為、周りの地形がどんどんと堆積してしまい、動ける範囲を狭め、急に変な所に引っかかって固定される窒息死を自ら招くことになります。特に、5T待ちしかないのに5Lを引いたり(或いはその逆)、もう捨てる場所に困って4T(5X), 4Y(5K)で埋めざるを得なかったりしたら最悪です。これ以上の段差をなるべく作ってはならないというのが、深い穴待ちになった場合の高次周の原則となります。もしどうしても2穴が複数出来てしまった時に、とっさに2Iが視界に入ってきたら、目視確認でき次第、中心から最も遠い座標にある穴から埋めるようにし、出現位置の周りが高ければ目標位置付近まで移動してから回転、そうでない場合は回転して素早くレバーで目標位置へ移動、を心がけて下さい(Fig. 11)。
2Iのように置く選択肢の多いポリキューブほど迷いが生じたり、あるいは軽いキューブだからと手成りで蔑ろな場所に接地してしまいそうですが、地形の損得判断のために24種のポリキューブ全てに対応できる手とは行かなくとも、重いキューブを引いて手詰まりにならないように慎重に立ち振る舞いをしなければ、ブロック・マスターとの戦いに勝つことは出来ないでしょう。
Fig. 9a |
Fig. 9b |
Fig. 10 |
Fig. 11 |
2Iはブロックアウトの立体的なブロック操作に熟れるのに最も与しやすいブロックであり、それでありながら回転の軸の位置によって非対称な挙動を見せるため、小ささの割には非常にテクニカルなポリキューブと言えます。特に、深さ2以上の穴を効果的に埋められる為高次周での出現が少ない分、引いた時には是非活用していきたい所です。
立てた形としては、得点狙いならばL0の形態を、伏せる形の回転入れならばR0の形態が有効で、寝かせる形は反時計回りに水平移動することを念頭に置いておきましょう。
小回りがききつつ2マスを一気に埋められるのは、寝かせても立てておいても使いやすいということです。地形に応じたケアが出来るように2Iとは仲良く付き合えるようにしたいものです。
[*1]2IをA0からR0に移行するには単にBBBとボタン操作するだけでなく、CCBとしても可能(∵CCでA2になるため)なので、Bの回数だけではなくCの回数も覚えておく必要があり、注意しなければならない。なお、A1, A3状態のBボタンとL0, R0状態のCボタンは変化の一切起こらない操作であり、これらは逆に回転数としてカウントしてはいけない。
[*2]Fig. 9aなら[(3,2)-(3,4)]だが、Fig. 9bに最適手が無いため、2段目で中抜きする[(2,2)-(2,4)]が最適妥協手となるだろう。