BLOCKOUT: ポリキューブ概要: 5X


回転法則図

A0はC回転が不変。L1はB回転が不変。
5Xの最短回転経路
A0 neutral
L0 B L1 BC

一瞬の隙を突いて地形を破壊し、初心者はもとより上級者すらもたった一手で葬り去る悪夢の「墓標」

 アーケード版ブロックアウトというものを体験したプレイヤーが、初めてその恐怖を味わうことになるのは、間違いなくこの5Xというペンタキューブであろうことは、恐らく疑いの余地もないのではないでしょうか。遭遇しても上手くやり過ごすことが出来れば、何の脅威も無いように見えますが、ひとたび一番嫌なところで引いた時、その十字のフォルムに死の恐怖を抱かずにはいられなくなります。5Xの真の恐ろしさは、受け口を作っていない僅かな隙というべき盤面に襲来し、立てた時に2箇所の穴を傘で塞ぎ、掘り返しの難しい形をプレイヤーに押し付けることです。また、その線対称かつ点対称であるフォルムから平置きの方法が1通りしか無く、非常に場所を確保しづらいので、後先を考えない置き方をすればこれもまた修復不能なダメージをピットに与えていきます。そしてとどめは、明確な対策が「5Xをぴったり差し込める場所を最低1箇所保持し続ける」以外に見当たらないこと。全ての性質がプレイヤーを倒す為に作られたと言っても過言ではありません。
 ゲーム全体の流れとしてはRound 10の3×3のフィールドで稀に出現するのが初登場となりますが、以降Round 14からは殆ど全ての末尾1,2面台を除くラウンドで出現しうるため、Round 20からスタートするプレイヤーについては、常に中央の1マス窪んだ地形を用意しなければならないという意識に思考が捕らえられてしまいます。高次周をコンスタントに抜けられるようになっても、受けを失った時の被害が余りにも大きすぎるため、高次周では他のペンタキューブとも複合した無慈悲な襲来に耐えなければなりません。それ故に、5Xを本作史上最悪のペンタキューブと呼ぶことには、異論はないものと思われます。
 このポリキューブに対して我々が出来ることは十分な対策を立てることしかあり得ません。しかも、ばっちりと備えた最善策だけではなく、明確な受けを失った時に脳を停止させることなく次善策を追うことも求められる中、我々に出来ることは何か、見ていくことにしましょう。

3×3での平置きは御法度、重ね積みは冥土への一里塚、周辺の高さと適合するかを一瞬で判断せよ

 まず、A0形態則ち初期位置かつ唯一の平置き面に関する考察です。平置き面をただ1種類だけ持つというのは1Iを除けば4O、5X(いずれも点対称かつ線対称の図形)のみの性質ですが、4Oの場合は回転軸がどれか1つのキューブに属するため、厳密な意味では1Iと5Xのみが唯一の平置き形態というものを有しています。これは実のところ、形状が変化しないために置き方のバリエーションが狭まり、難易度を上げている要因だと言えるのです(4Oでも同じ件について触れています)。
 この形態を扱う上では、5Xを格納できる隙間が揃っており、なおかつ隣接する地形がそれなりに揃っていることが要求されます。そのことを考えれば、何故3×3で平置きが悪手なのかは、Fig. 1の通り一目瞭然でしょう。 Round 30で初手5Xの平置きをやらかすと、殆どのペンタキューブで青の層が死ぬか、中央の高さが増すか、いずれにせよ死に直結することになります(そのため、初手5Xに対する定石は左側に立てる、というのが正答となります。それについては後述)。因みに本図では紹介していませんが、平置きの手に対する最悪のポリキューブは5Xです。
 それ以外のピットであれば、穴は最高でも3つまでにしか分断されず、最も狭いパターンでも1I, 1I, 5Cの待ちになるので、初手平置きについては十分許容範囲です。ですが、必ず他の地形と上手く隣接させられるような状況を作り、それが上手くいかなければ最悪でもL面の立たせで出来る2個の穴の片側だけでも塞ぐパターンにしておきましょう。FIg. 2の2コマ目が良形、3コマ目が愚形、4〜5コマ目は退避のL0形態です(安直な中央スライドに対して、5I待ち残しのために5コマ目を選ぶプレイヤーが多いでしょう)。ただし、図で示している末尾5面台はステージの特徴から1段の高さが失われるだけでも厳しく、紫勝負も死の世界です。5Xの受けに失敗した場合は必ず穴の位置を記憶し、速やかに紫の層を埋めに行かなければなりませんので、集中力を研ぎ澄ませてリカバリーして下さい。頼りになるのはあなたの記憶だけです。逆に平置きすれば隙間はないものの、原則的に許されない置き方というケースもあります。それは、5Xによって周りの空隙の深さが増していくパターンです。分かりやすいのがFig. 3のシチュエーションです。最初の状態だったら、何の疑問もなくこの十字をすっぽりと填め込むでしょう(1〜4コマ目)。しかし、更に5Xが連続で来た場合、(6コマ目のように)あなたは更に以前平置きした位置に5Xをもう1個置きますか? 否! これは左下が深さ2の穴と化し、右下はRound 23で出現しやすいCSやCZを埋めた途端すぐさま3I待ちとなる危険な地形を招きます。これも立てて退避(7コマ目)が正答になります。しかし、この隙間は、無理にスライドさせて埋めてはいけません。何故ならその一見して上手い修復法も、深い穴を生み出してしまうのです!(10コマ目) この図のコマを更に進めてご覧になると、時には緑勝負にまで持ち込んで消しやすい形を狙いに行く執念の選択も考えられるのです。ブロックアウトは綺麗な形だから勝てるというものでは一切ありません。綺麗な待ちも単一受けの厳しい待ちも消せなければ敗北、とすればどんなに苦しくともフェイスを狙える形を追求するしかないのです。
 平置きを最も生かしやすそうなのはRound 28等の8面台です。ただし、5Hや5Fなど、更に難しいポリキューブとの共演となり、平置きの仕方が変わることでどんな受け方があるかを押さえておきましょう。Fig. 4で簡単におさらいしてみます(なお、8面台は横が7と非常に長いことから、横に滑りやすく、他よりもプレイフィールドの縮尺が小さいステージとなっているため、操作ミスには十分気を付ける必要があります)。
 いかがでしたか? これだけでも十分に5Xの平置きが「余程安全な時にしか行えない」というのが見て取れたのではないでしょうか。そして、重要な点を最後にもう1つ。Cボタンが効かないということです。これは見れば当たり前の性質ですが、海外版とは異なり日本語版は回転方向が2つしか有りませんから、そのうちの1つが絶たれているということは残りがL0への変換しかないのです。これが何を意味するのかは、次の項で見ていきましょう。

Fig. 1
Fig. 2
Fig. 3
Fig. 4

L面の立てる形が5Xの「基本形態」、この受けを探して高次周はひたすら戦うことになる

 最後の形態は、縦に立つL0形態と、横に立つL1形態であり、Bボタンを経由しなければこの形には辿り着きません。平置きの不利を知った以上、このL面の高さ3を持つ立て掛ける形を主体に戦う必要がありますが、これこそが、「受け口がない場合に最大2つの隙間が出来てしまう」という、プレイヤーの計画を破綻させる要因です。そして、その究極の対策とは、「すっぽりと入る場所を1箇所用意する」ということです。これだけで5Xの脅威は無くなりますが、逆にそれが出来ない場面が出来るからこそ、そして出来やすいからこそ、この5Xは脅威なのです。
 オーソドックスな対策は、5Cがあれば一発です(Fig. 4)。ただし、5Xは1度置いたから安心という類いのものではありません。そう、置いた後に出来る形状は4TのU面と同じという、中央の高いやや悪形です。更にもう1個の5Xに備えるには、再びどこかでフェイスを消したりしながら高さを揃えて1-0-1の高低差を作らなければならないのです(Fig. 4の5コマ目からは、5Qを使って1段高い十字受けにしています)。5Xの差し込み跡として出来た中央の高い山型の部分は、5C等で平たく潰せればそれに越したことはありませんが、間違っても4Sや4Tを立てて高低差を著しく変化させないようにして下さい。極端な高低差は受け口を減らしてしまいます。
 しかし、これがより重要なことですが、完全に受けられる箇所が無くとも、簡単に諦めないで下さい。前段でも紹介した通り、L面の2つの傘になる部分が受けられないとしても、片方が埋まっていれば十分に復活の可能性があるので、なんとしても片方の穴を覚えるだけで済む地形を見つけたときに叩き込めるように備えておきましょう。Fig. 6のような場面で運悪く5Xを引いてしまっても、スライドによって救済できることがあります。5Xの着地点と同じ高さの窪地がそれなりにあれば、受け入れられるスライド入れは多岐に亘ります。ただし、スライド入れは決してリスクを全て帳消しにするものでは無く、埋めたポリキューブによって組みにくい地表を形成してしまうということが無いように、最善の場合、次に良い場合、悪い場合という順位付けをしっかり出来れば、一流のブロック・マスターと呼ぶことが出来るでしょう。
 5Xの出現を前提にした際にやってはいけない形状というのは、Fig. 7のクロス型の地形です。このことから、5Xはコーナーにある1I穴および2I穴が対応できないという極端な弱点を有しています。2穴に対応できないのは仕方ないとしても、コーナーの1マスが埋まらないというのはパリティが4:1と偏った5Kとは逆の性質です。当然このような場合には重ね積みが許されませんので、2穴に引っ掛けて「片方が埋まった」形の置き方を選択します。当然、紫勝負となったので、青の層でも後で削れるようにと入念な計画を立てて中抜きを実行しましょう。穴を作らざるを得なくなる場面でも上手く分割し、消すべき最下段の面を死守するように心がければ、早い段階でリカバリーが出来ます。5Tの使い方(7コマ目)など、中抜きに特化したセンスが必要なのは確かですが、そこは思考を重ねた上で磨き上げなければならないテクニックです。
 さて、2I型や3L型などのコーナーで作ると都合の悪い隙間は、ピットの中央で待つ方が良いということになります。特に中央のレーン2I、また3×3のピットでは、筆者が「黄金の待ち」とも呼んでいる7マスのコの字型(Fig. 8)は、問題の起きそうなポリキューブが中央の列が高くなりがちの5K程度のもので、5Xや5Hに安心した受け方が出来、5Fや5Lも乗せるだけなので、狙い目の形と言えるでしょう(勿論、フェイスを消すのが最終目的の為、その形が崩れても1フェイス貰えれば上出来です)。
 L面の回転はL0→L1、L1→L0という縦横の変換がCボタンに当たり、L0の時だけ平積みに戻すL0→A0というBボタンの回転が使えます(L1ではBボタンが無回転となり要注意です。A0→L0→L1は、安全弁のような構造になっており、特定のボタンでしか回転できないようになっています)。そして、このL0というのが非常に厳しい形であり、3×3で5Xを引いた時の死亡率の高さを押し上げる要因があります。それは、天井蹴りによる制約で、中央の高さが天井-3よりも上になっていると、5Xは一切操作不能に陥るのです。また、天井-3の高さでぎりぎり逃げられるとしても、速やかに左右レバー要素を入れなければ固定が待っています。ということでFig. 9の例を2つ見てみましょう。9aのシチュエーションとしては、追い詰められたところで鉤形が欲しかった状況でCSをドロー、それを3使いで差し込むも中央の高さが7になった時点で5Xを引き、万事休すという場面です。最後の粘りをと追い込んでいた時に、止めを刺す十字の例としてはこのような典型的なパターンがあり得ますが、Fig. 9bも強烈です。奥に5Xを差し込めば生還の余地ありということでいざ操作を試みるも、まずはBボタンで縦に向け、次にCボタンで横に向け、そしてレバーを上……が、間に合わず引っかかり、抹殺されるというシーンです。回転に必要な描画はSALさんの操作解析により4ないし9フレーム、一方自由落下1回+固定までのフレーム数はLevel 1なら50フレーム(0.83sec)、Level 3なら42フレーム(0.70sec)、Level 5ならば32フレーム(0.53sec)という短さになります([src:SAL B3.1] [src:SAL B4.1] [src:SAL B7]*1)。これだけのリアクションタイムしか余地がない中で5Xを2回回転しなければならない上、処理落ちの懸かり具合により操作の猶予が変動するという恐るべき仕様となっており、これは最早地形を作った時点で敗北は必至ということになります。海外版のAボタンが使えれば1回回転が少なくなるだけに、日本語版は非常に厳しいルールとなっています。高いところで5Xを引かされた場合、敗北を受け容れる他有りません。5Xが死の十字架であるということをまざまざと見せつける回転法則です。

Fig. 5
Fig. 6
Fig. 7
Fig. 8
Fig. 9a
Fig. 9b

3×3の「初手十字」と他のポリキューブとの相性を深く知る

 ここでは、特別企画と題して、5Xと3×3で登場できるブロックとの相性を考えてみます。5Xと3×3のピットとの複合に苦しんでいるプレイヤーが数多くいる中、多くの研究が進められたのがその対処法です。初手5Xに対する対処の可能なパターン、および他にも特筆すべき事例がある場合を掲載します。

トライキューブ以下のポリキューブ(1I, 2I, 3I, 3L)

 3Iのみ、初手5Xの隙間を埋めることが出来ません(回転の際に縦横どちらにしても中央へ移動し、5Xの着地した脚にぶつかる為)。それ以外は直ちに埋められる為、補修を行いましょう。しかし、Round 30/40では、ユーティリティプレイヤーの3Lが出現しないという最も厳しい条件で望まなければならない為、致死率が急激に上昇する要因の1つとなります。

フラットなテトラキューブ(4L, 4S, 4T, 4O)

 4Lはスライド入れ、4Sは、壁蹴りを伴う回転入れが可能です(Fig. 10)。4Tによる回転入れは、平面での回転は3Iと同様の理由、および立体的な回転を試みても5Xが2段目を占拠していることから必ずブロック蹴りが発生します。4Lのスライド入れが一見して魅力的ですが、やるなら1回だけにして、紫勝負から青を削る方針にしましょう。何故そうするかというと、4Lを2本入れてスライドしてみた結果を見れば結果は明らかです(Fig. 11)。この状況で4Tや4Lを引けば生還ですが、最悪のケースの1つである4Oを引いてしまえば……。
 4T, 4Oについては、紫勝負割り切りの体勢です。Fig. 12の4Oは、現状の勝負位置と無関係な青を後々の為に考えて(或いはネクストで勝負をかける為)逃す場合と、中空4L待ち(5F聴牌)が良いかと思われます。この形ならば、5Lを引いた時に回転入れの障害になりません。逆に、中空4O待ち(5Q聴牌)は相性の悪いペンタキューブに5L, 5Tやブランチ(4Y, 5K, 5F)などがいる為、全くおすすめしたくない手です。4Tも指針については同様ですが、D面押っ立てという荒技があります(Fig. 13)。この紫勝負後の青の補修を捨てた手も、後々2段目より上を綺麗にしながら埋めていきたいという考えがある為、右端か真ん中かという選択肢がありますが、5Lの回転入れを邪魔しない中央の方が良い手のように思われます。

Fig. 10
Fig. 11
Fig. 12
Fig. 13

立体テトラキューブ(4Y, CS, CZ)

 スライド入れは全て補修可能です。ですが、地形の良さを考えると、CS/CZについてはそれぞれ3使いスライドの方法(いずれも紫が5C聴牌)のやり方もありますが、敢えて中空スライドにとる方法もあります。この場合は4Lなどのスライドを待って右端のみの対処に専念させる他、4Oのめり込み回転を利用する(12コマ目から、BBB→ABで実施)ことでの補填を期待できます。4Y(Fig. 15)については恐らく最高の補填手段ではないでしょうか。4Lの隙間は埋めればあとは左下([1,3,1])のみが青の穴となることが確定しますし、何よりも5Pの削り目がおいしい為、見た目以上にお得な手段です。4Lはスライド入れして底面を4Tの窪地にするよりも、紫勝負確定でフラットな状態の5P待ちの方が被害の少ないブロックが多いのですが、例外としてやはり5Xが5P状の窪地に適合しません。十分形ですら破壊する5Xがいかに恐ろしいかが分かるでしょう。
 また、Round 30対策として、特殊なCS/CZの配置を紹介します。それは、なんと2使いをオープニングに使うというFig. 16の手です(例はCSの場合)。これについてはSALさんによる実験的手法として始められた定石という認識がありますが、5Xの2段目が充填される傾向を逆手にとって、4Lリーチ目を作るなどの手法に用いられているようです。また、5Kなどを中空に浮かせて2段目鉤形待ちという形状は、全ての立体テトラキューブが聴牌となり、案外揃いやすい条件でもあります。勿論、平凡なブロックはスライドで良いわけです。この手の実用性については筆者の研究が追いついていませんが、実践で使用される例も少しながらあるようです。

5X

 複数回の連続で5Xを引いた場合の警戒は最大級です。ですが、3×3フィールドの定石としては、度々登場する「5Lの都合」から左、次いで中央の列へと縦に並べるのが理想的です(Fig. 17)。さて、5Xが3連続以上で登場すると、実は2段目でフェイスを貰うことが出来ます(同図7コマ目まで)。5Xが頻繁に振っている際に気をつけるべき事は、「互い違いの5Xがかなり危険な存在になるということです。どういうことかというと、同図10コマ目からそのシチュエーションが始まります。1段の差が出来た状態で5Xが互い違いに組まれるような形は、フェイスを消すことが出来ず、4TのU面の形状が高く堆積していくという非常に危険な兆候なのです。5Xは、立てて揃える時も高さが同じ状況になるようにすればさほど危険ではありませんが、5X→5X→5Qまたは5Kの「3ターンキル」などもあり得ますので、ブロックアウトの恐怖を肌で感じ、いかに十字対策は大事か、そして対策してもし切れないのかを痛感する必要があります。

Fig. 14
Fig. 15
Fig. 16
Fig. 17

5L

 ここで満を持して登場の5Lです。5Lはその回転軸がブロックの存在する位置になく、直角の中心の空隙に存在する異常なポリキューブです。この特筆すべき性質は、なんと回転によって5Lの辺を5Xの片方の傘の下に吸い込ませることが出来るという特殊な回転入れです(Fig. 18)。ボタンは初期状態からBC→ABです。4Lの場合は形状が悪く、4L×2のスライド入れは避けたかったのですが、5L×2のスライドは、4T, 5H, 5Kなどのt字を持つポリキューブの恰好の待ちです(同図9コマ目)。勿論狙えれば気持ちいいのですが、そうは上手く行かないでしょう。とはいえ、5Lは4Lと違い、表面のコーナーを覆うような形をしている為、適切な退避場所が回転めり込み以外有り得ないのです。運を天に任せて5Hを引くのを待ちましょう。

その他のフラットなペンタキューブ(5T, 5C, 5P)

 スライド入れが出来るペンタキューブは、5Xとの受けが非常に良い5Cです。Fig. 19のように、5Cはスライドで2箇所の穴を一気に塞いでしまえるほか、左側ではなく右側に5Xが立っている時にも回転入れで笠の下の両方の隙間を一挙に埋めることが出来るという、なるべく5Xとペアで登場が望まれるポリキューブです。ですが、5Cを対策として使うのであれば、5Xの中央の座標をしっかりと包むような使い方をして下さい。くれぐれも6コマ目のような3使いはしないようにしましょう。
 5Tとは相性が余り良いとは言えません。4Tと同様の理由で回転入れやスライド入れが全く実行できない上、形もかなり邪魔臭いレイアウトが残ります。基本はL0/L2の形態で、5Xの紫のラインと5Tの紫のラインを揃える戦法です。フェイス消去時に残る高さ2の棒の位置が変わるので、5Tが2丁の時は同じサイドに揃えて5P待ちとするのが妥当でしょう(Fig. 20)。態々サイドを変えていわゆる5Wの形に受けてみると、4Tを入れる箇所がなくなるというどうしようもない自滅行為です。
 5Pは、直後の2手目では直接キーになる働きが余り出来ませんが、削り目で使いやすいという性質を持ちます(4Yの項を参照)。2手目としては勝負を次のポリキューブに賭ける5使いか、紫4L聴牌が鉄板でしょう(Fig. 21)。逆に2Iを底面にする方法は5Lのバイパス手術に成功するか、4T, 5Tなど中空の紫3I待ちを埋めるものが来なければ、青の層抜きで戦うことになってしまいます。

Fig. 18
Fig. 19
Fig. 20
Fig. 21

立体ペンタキューブ(5Q, 5K, 5H, 5F)

 5Qのスライド入れは非常に厚みのある地形を作り出します(Fig. 22)。ばっくりと2段の段差が発生しているということは、「2段の段差」に弱いブランチや4Tが来るとまずいのですが、幸いにしてその最悪の状況でも穴が1つだけ待ちの紫リーチにつなげることが出来ますし、5Fなら問答無用で1フェイスです。ブランチによる消去は青の層の残り方が散らばって面倒な形なので、ポリキューブの引きによっては再び危険にさらされることがありますので、厚みのある形だから安定だ、と油断することは出来ません。残りフェイスが少ない場合には迅速な選択が要求される為、底面の形を使い分けて紫の待ちの断面を、3Lや2Iに振り替えることも検討できます。
 5Kとは非常に相性が悪いです。もし、これが逆で5K→5Xの順序で登場してくれれば、適度な高低差を持った地形で5Pの削り目を待てるという形になりますので展開は優位に立ちますが、ここではより悪いケースである5X先のケースのみに集中しますと、Fig. 23のような待ちが一番優秀だと思われます。4使いで5C待ちは次点といったところです。ここで注意して欲しいのは、回転軸の位置です。回転軸はこの場合コーナーに接するのが正しいやり方です。さもないと、後で紫で1フェイス消えた時に、コーナーに2穴が出来てしまい5Fのぶっ刺し待ちという難しい形が浮かび上がってきてしまいます(勿論5K×2となった場合、どちらかが2穴になるのは覚悟しなければなりません)。
 5Fもスライド要員ですが、4Yと似た性質の為に5Pの削り目が生まれます(Fig. 24)。ブランチ待ちが出来る上に削り目を確保できるのは、4Lには無かった特徴です*2。ただし、回転はCBCC/BCBC/BBCBのいずれか4手となりますので、自然落下が少ないうちに決めて動かせないと、5X対策以前の問題で死に至ります。Fig. 24の5コマ目以降は、おまけで考えられる技であり、Fig. 8で作ったコの字待ちを紫の層に無理矢理作る技です。これも残り1フェイスの緊急対策として、速い手で使えるかもしれません……?
 そして、最終ボス5Hです。驚くなかれ、実はFig. 25で紹介の通り回転入れが可能で、下段ならB→AB、上段ならCCB→ABという入力で、中央の([2,2,1])こそ浮きますが紫の4L聴牌という、5Hからは想像も付かない美しい地形にすることができます。他の方法としては紫の待ちの断面図が5C(U面の底面4使い)、3I(A面の2使い)、3L(L/R面の1使い)1マス×2(D面の1使い)とありますが、A面の方法は5Xを差し込めない難点があり、1マス×2は2つのネクストを待つ必要があり長期戦を強いられ、5C待ちはそもそも少ない出現率のキューブに賭けており、4Lを待つなら回転入れがベターなので、選ぶ理由に乏しいといえます。中空3L待ちとなるL/R面も次が中空3待ちに対応するキューブでないと厳しい点があります。下段回転入れは手数が少なく、レベルが上がっても通用する手法なので、是非ともレベルアップの為に覚えて欲しい一手です。

Fig. 22
Fig. 23
Fig. 24
Fig. 25

総括

 最も扱いの難しいポリキューブの最上位クラスに位置する5Xは、特に3×3での行動を制約する大きな原因の1つで、対策こそ明快ながらそれを怠っただけで、どんなに優れたプレイヤーですらも不条理に殺されるという危険な性質を誇ります。形態の種類の乏しさと、平置きでの扱いにくさ、そしてそのまま立てた時に残る2つの1穴に傘がされているという厄介な性質が美しい形で完結しています。
 その基本は立てて差し込むことで、4TのD面に相当する地形を確保すれば良いのですが、常にポリキューブを積み上げていくことによって変化する盤面で、時として待ちが成り立たなくなる場合があり、そこで5Xの一撃が大きな痛手となる、というのがこのゲームの負けパターンの代表格となっています。完璧な待ちの維持は不可能にせよ、被害を最小限に留める方法は残されています。特に3×3と5Xとの関係は切っても切り離せない間柄であり、その対策は全てのポリキューブについて初手の定石を知っておくのが絶対に得になると思われます。

[*1]リアクションタイムの計算は、資料4.1節における各レベル毎の固定猶予時間(8+level frame)と7項のRound 20/30の落下速度[41,36,31,26,19]の総和として簡単に算出した。
[*2]5Fは、スライド入れをしなくとも、3使いのU面で落下させれば必ず5P聴牌となる。


目次: 1I | 2I | 3I | 3L | 4I | 4L | 4T | 4O | 4S | 4Y | CS | CZ | 5I | 5J | 5Y | 5X | 5T | 5L | 5C | 5P | 5Q | 5K | 5H | 5F
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